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会社で資格を取らせたのに、すぐ退職?

 社員のスキルを高めるために、資格取得に会社が補助を出すことがあります。
社員が首尾よく資格取得すれば、会社もお金を出した甲斐があります。
社員がすぐ辞めてしまえば、資格取得費用は誰の負担になるのでしょう。

 会社の発展のためには、一人一人の社員のスキルが高くなって、競争力が上がることがとても大切です。AIが進化していると言っても、最後は人対人の関係でビジネスが成り立っている以上、社員のスキルを高めていくことは、経営者の重要な役割になってきます。
スキルの上昇をわかりやすく判断するためには、資格の取得をしてもらうことが一つの手段になってきます。今では、いろいろな国家資格や民間資格もありますので、まずみなさんの会社で、社員にどのような資格を取得させるのが良いか検討する必要があります。

 次に、どうやって社員に資格を取ってもらうかですが、そのためには、勉強と、受験が必要になります。社員にモチベーションを持ってもらうには、受験で合格したらごほうび(資格手当等)が必要になりますし、先立つもの(受験のための勉強の費用)を会社が負担してあげることも大切になってきます。
 めでたく社員が合格すると、資格取得者が社内にいるので会社の競争力は高まるのですが、逆に、そのようなスキルの高い社員を横取りしようとする会社もたくさん存在します。その結果、せっかく頑張って応援して資格を取らせた社員が、資格取得と同時あるいは直後に退職してしまうという踏んだり蹴ったりの出来事が起こったりします。

 そこで、資格取得費用は会社の負担ではなく、会社から社員に貸し付けるということが行われたりします。これによって、社員も元取らないといけなくなりますし(結果的に勉強頑張る)、他社への転職も取得費用の負担が重いほど防ぐ効果が見込まれます(絶対ではありません)。

 資格取得費用の貸付について、裁判になった事例も最近では公表されています。自動車教習所の教習指導員資格の取得費用を会社が立て替えて、貸付金として扱う、ただし資格取得後三年間勤務した場合は返済を免除するという約束の有効性が争われたものです。労働基準法16条では、社員が働かないことに対する違約金や賠償金を定めることが無効とされているので、退職の自由(これは憲法でも保障されています)を奪うような約束は、無効になるのです。

 本件では、契約内容は有効と結果的にはされたようですが、実際に社員の資格取得費用を立て替える場合は、契約をどのようにするのかについて慎重に定めておかないと、立て替えた金額すら返してもらえないということになりかねません。なんで立て替えた費用まで返してもらえないんだという声が聞こえてきますが、会社と社員は、横綱とアマチュアくらい力の差があるというのが法律の建前なので、会社はいろいろと慎重な対応が求められるのだと思っておいてください。

以上

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