財産分与の2分の1ルール
今年5月に民法等(家族法)の改正法が成立しました。離婚後共同親権の導入は、報道でも大きく取り上げられ、議論を呼びましたが、あわせて、離婚にともなう財産分与についても改正がなされています。
離婚をすると、夫婦の一方は他方に対して、財産の分与を請求することができます。(伝統的には、妻が夫に対して請求するケースがほとんどでしたが、近頃は共働きが増えてきたこともあって、逆のケースにも遭遇するようになってきました。)
この財産分与は、①夫婦財産関係の清算、②離婚により経済的に困窮する夫婦の一方に対する扶養、③離婚に伴う慰謝料の3つの要素があると言われてきましたが、裁判所が考慮すべき事情としては、民法は「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情」としか定めていませんでした。
今回の改正では、財産分与の目的が「離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため」であることが明記されました。これは、先ほどあげた3つの要素の中でいう②離婚後の扶養の要素がこれまで軽視されがちであったという指摘が意識されているものと思います。そして、考慮すべき事情としては、「当事者双方がその婚姻中に取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情」とされました。
そして、財産分与における寄与の割合は、寄与程度が異なることが明らかでないときには、相等しいものとすると定められ、いわゆる2分の1ルールが明記されました。
今回の改正によって、財産分与に関する裁判所の判断に変化が出るのか、出ないのか、不透明ではありますが、考慮すべき要素が明示されたことによって、寄与割合に関する当事者の主張はより活発・詳細になるのではないかと予想します。また「その他一切の事情」として、家事や育児などのために仕事をセーブした一方配偶者がいる場合、稼働能力の格差や、チャンスの喪失なども考慮されるべき要素となるでしょうし、初婚年齢が上がるにしたがい、こうした問題意識はより鮮明になってくるのではないかと思います。
なお、財産分与の請求期間を2年から5年に延長すること、財産分与の対象となる財産を正確に把握するため、裁判所が当事者に対し、情報開示命令を出すことができることなどもあわせて定められました。
近頃は「2分の1が離婚する時代」だとして、結婚を考える2人が、夫婦財産契約を結んでおきたいとご相談にみえることも増えています。気になることがあれば、ご遠慮なく弊所弁護士へご相談ください。
以上