懲戒解雇と除外認定
懲戒解雇を行う場合、労働基準監督署で除外認定を受けることになります。
認定は簡単に受けられるわけではなく、懲戒解雇相当の事実が必要です。
専門家に相談しながら手続を慎重に進めましょう。
ハラスメントに、横領・窃盗、無断欠勤や虚偽報告、飲酒やけんかなどで警察のお世話になる、顧客の秘密情報を外部に漏らすなど、社員の不祥事は毎日後を絶ちません。よくまあこれだけ問題を起こす社員がいるものだなと感心するくらいです。
そんな社員はとっととくびにしてしまえ!と怒鳴りたい社長も多いと思いますが、「くび」というのは懲戒解雇を法律的には意味していることがほとんどです。気を付けないといけないのは、懲戒解雇は社員にとって最大の不利益ですから慎重な手続が必要とされているということです。
まず、就業規則の懲戒規定に懲戒解雇のことが定められていることが必要です。標準的な就業規則には懲戒解雇の規定が入っていますので、就業規則がある会社であれば基本的には規定はあると思います。
次に、先ほども述べた通り懲戒解雇は社員にとってとても不利益な処分ですから、事実と処分のバランスが問題になります。例えば、単なるミス(仕事ができない社員によくある)や業務と関係のないような私生活上の問題(不倫など)などでは懲戒解雇はできません。限界的な場面では、懲戒解雇が認められるかどうか微妙な件もあるので専門家(社会保険労務士、弁護士)への相談が望まれます。
三番目に、本人に事前の連絡をしたうえで事実関係について本人の主張を聞く必要があります。一方的な言い分だけで懲戒解雇をすることはできませんので、必ずその手続が必要だと思ってください。就業規則に懲戒手続について定めがある場合には、それもきちんと踏まえる必要があります。頭に血が上って本人の言い分を聞かないと言うことでは逆に訴えられたりしますので注意が必要です。
そして、解雇通知は書面で渡した上に、受け取りをもらいましょう。いつ懲戒解雇がされたかはっきりしないと後から揉める原因になります。
これらの手続を怠ると、解雇無効の訴訟を起こされて、裁判中働かない社員に給与を払わないといけなくなったり、退職金を払う羽目になったりします。さらにひどいケースでは不当解雇として慰謝料の請求をされたりもします。
ところで、「解雇予告手当を払うなんて泥棒に追い銭みたいなもんだから、懲戒解雇にしたいです。懲戒解雇なら解雇予告手当を払わないでいいんですよね」とご質問を受けることがあります。答えはノーです。解雇予告手当を支払わずに済ませたいのなら、並行して労働基準監督署で除外認定という手続を踏む必要があります。届出ではなく、認定ですので、懲戒解雇にふさわしい事実があることを証拠を添えて説明する必要があります。
社員に対して怒りが爆発しそうになることはあるでしょうが、懲戒解雇はあくまでもビジネスの一環だと思って、専門家の助けを借りつつ、適正に行っていくことがベストですね。短気は損気。昔の人が言っていたことは真実です。
以上