メルマガ Mail magazine

職場ではみんな仲良く?

 人が集まると、どうしても好き嫌いは生じてきます。
社員の孤立を防ぐ思いやりは大切です。
会社としてはどこまでの配慮をしてあげる必要があるでしょうか。

 人間は一人では生きていけないので、昔から集団を作って生きてきました。家庭のように血縁関係によりつながっている自然な組織と異なり、会社は大人が集まって事業という目的に向かって進んでいきます。

 人が3人以上集まると、あの人とこの人とでは、あの人の方が人間的に好きとか相性が合うとか言う話に必ずなるのですが、人数が増えれば増えるほど、人間関係は複雑になっていきます。そんな中、職場の中で孤立する人が出たりすることがありますが、本人の性格や能力など資質によるものか、いじめのような会社として問題のある状況なのかは、微妙なケースがあります。

 テーマパークは、社員の協力が一般的な職場に比べても強く求められる職場ですが、日本最大のテーマパークで出演者として働いていたところ、パワハラや集団的ないじめで精神的苦痛を受けたとして裁判になった例があります。地方裁判所では、パワハラやいじめまではいかないが、職場の人間関係を調整して孤立する社員が出ないようにすべき義務があったと認定されて、慰謝料の支払いが命じられました(この判決についてはいろいろ議論すべきものがありますが、孤立防止義務についてだけ触れることにします)。

 会社は、社員が働く場所を提供していますので、社員の生命・身体の安全に配慮する義務があると一般的にされていますが、メンタルヘルスの確保も最近は注目されるようになってきます。今回、孤立防止義務という観点が指摘されたことは極めて注目すべきことではありました。

会社側が控訴して、高等裁判所で判断がされたのですが、今回の裁判では孤立防止義務というものが明確になっておらず抽象的なものに過ぎないし、本件でそこまで孤立していたと認めることはできないとして、会社側の主張を認めて慰謝料の請求は棄却されました。

私たちが裁判例から学ぶべきことは、職場内での人間関係の調整は、業務を円滑に行うという観点から、社員間でいじめのようなものが起きていないかについて配慮する義務はあるものの、個人間の好き嫌いのようなものまでは求められていないというあたりに線引きがされるように思われます。

もっとも、実際の判断には難しいところがあるので、会社は、変だなとか違和感を持った場合には、弁護士など専門家に問題にならないか、あるいは、今のうちにできる対応がないかを早めに相談しておくことが良いかと考えます。何事も転ばぬ先の杖ですね。裁判になってしまっては、弁護士費用もたくさん掛かってしまいますので。  

   以上

関連記事

2018.03.05

民事裁判の訴状、ネット提出可能に 最高裁が検討

日本経済新聞に「民事裁判の訴状や書面をインターネットで提出できるよう最高裁が検討を始めた。」との記事がのっていま…

2019.06.10

マンションの空室はどうする

マンション空室率が過去最高になっています。区分所有法に基づく早めの対応が大切です。修繕積立金の不足等が今後問題に…

2023.10.23

戦争の影響で仕入ができない、支払が行われない!

 ロシアとウクライナに続いて、イスラエルとハマスも戦争状態です。 戦争が始まると当事者の国からの商品供給が止まる…

PAGE TOP

COPYRIGHT © SHINWA LAW OFFICE ALL RIGHTS RESERVED.