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競業避止特約の有効性

 退職する従業員に競業行為をされては困ります。合意で禁止すればよいのでしょうか。 

 テレビやインターネットで転職サイト等のCMをよく見かけるようになりました。終身雇用が一般的であった時代は終わり、今や、転職はキャリアアップのための手段として、多様な働き方を実現するための手段として、自然なものとなっています。

 新入社員時代から育て上げ、相応のスキルや経験等を積んでもらい、いざこれから会社のためにバリバリ働いてもらおうと思っていた矢先に、会社を辞めます(そして、独立します、あるいは、他の会社へ移ります)なんて言われることも珍しくありません。
会社としては、大変ショックで残念なことです。自社で培ったノウハウや営業秘密を使われてしまうんじゃないか、顧客を持っていかれてしまうんじゃないか、と不安になりますね。
こういうときに、そういえば、退職する従業員から誓約書をとっていたから大丈夫だ!あるいは誓約書をとるから大丈夫だ!と安心されることも多いかと思います。

 実は、退職後に競業行為を禁止する合意(競業避止特約といいます)は、その有効性が争われることが多く、無効と判断されることも多いので、注意が必要なのです。
ご存知のとおり、私たちには、職業選択の自由が保障されており、転職するのも自由です。よって、これを制限するには、制限するだけの理由が必要となるわけです。

 すなわち、退職する従業員の職業選択の自由を制限してもなお、守るべき企業の利益があるかどうか、という点がポイントとなります。この守るべき企業の利益の代表的なものとして営業秘密があげられますが、それに限定されず、同様の価値のある営業方法等の独自のノウハウや顧客等の人的関係も含まれると言われています。
とはいえ、いくら守るべき利益があったとしても、禁止する内容がその目的に照らして合理的な範囲でないといけません。

 よく質問されるのは、禁止期間を何年にしたらいいですか?というものです。これは一概には言えません。が、裁判例の傾向としてお話するのであれば、1年以内ならばセーフとなる傾向、2年となればアウトとなるリスクがでてくる、というところでしょうか。しかし、実際には、退職する従業員が受ける不利益の程度、守るべき企業の利益の内容、それを保護するための手段としての合理性等が検討されることとなりますので、簡単ではありません。

その従業員が問題となっている営業秘密やノウハウ等に接していなければ、たとえ執行役員等の地位にあったとしても競業を禁止する必要はないとされうるでしょう。

 また、競業行為を禁止する地理的な制限を設ける場合は、設けない場合に比べて、弱い制限といえますので、特約を有効づける要素となります。

このように、競業避止特約は事案に応じてその有効性が慎重に検討されることになりますので、どうぞご注意ください。

以上

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