求人票とは異なる雇用契約書を作成してもいいですか?
求人票と相違する雇用契約書の労働条件は無効となる可能性があるので注意が必要です。
優秀な人材をスピーディに採用したい。どの企業も望むところです。そのためか、求人票には人材が集まりやすい、つまり労働者にとって有利な労働条件を記載することも多いかと思います。
ところが、実際に雇用するとなった際に、求人票の記載とは異なる、具体的には求人票の記載より不利な労働条件で雇用契約書を取り交わしたらどうなるでしょうか。参考となる裁判例(大津地裁令和6年12月20日判決)がありましたのでご紹介します。
令和5年6月19日、X(原告)は、ハローワークにおけるY社(被告)の求人票をみて、同月20日にweb採用面接を受け面接当日の午後に7月1日を就業開始とする採用内定通知がだされXはこれを承諾しました。求人票には、「正社員」「雇用期間の定めなし」「試用期間あり 期間2カ月」等と記されていました。ところが、翌21日にXとY社が取り交わした雇用契約書には、雇用期間2カ月との記載があり、Y社は、Xに対し、期間満了による雇用契約終了の通知をしたため、Xは期間の定めのない雇用契約が成立している等主張して争いました。
裁判所は、Y社がXに対し本件契約書作成時まで雇用期間について説明することはなかったのであるから、本件内定通知時点で、試用期間を2カ月、雇用期間の定めがない、勤務開始日を7月1日とする始期付雇用契約が成立していると認定しました。
そして、雇用契約書の作成は、すでに成立している始期付雇用契約の変更合意として有効かどうかを検討することとしました。裁判所は、雇用期間を期間の定めのないものから、2カ月という短期に変更する合意は、賃金等の変更に比肩するような重要な労働条件の変更にあたるとして、労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するかどうかを検討し、本件では存在しないとして、変更合意の効力を否定しました。
採用時に、求人票と異なる、特に労働者にとって不利益となる条件で話をすすめる場合には、しっかりとその旨を労働者に説明して十分に理解されていることを確認したうえで、内定通知を出すようにしていただければと思います。判断に迷われた際には、どうぞご遠慮なくご相談いただければ幸いです。
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