メルマガ Mail magazine

「公益通報を理由に解雇したらアウトです」

 

 従業員等が企業・組織の不正を内部から告発する「公益通報制度」は、コンプライアンス経営において重要な役割を担っています。2022年6月1日施行の現行法では、事業者の体制整備が義務化され、担当者に刑事罰をもって守秘義務が課されるなど、大きな改正がありました。
しかし、公益通報者が不利益を受けることを恐れて通報をためらうケースが依然として多いという実態があります。このような背景から、2025年6月11日、公益通報者保護法の改正法が公布されました。今回の改正の概要をご紹介します。

今回の法改正では、大きく分けて以下のような改正が盛り込まれました。

1. 企業における体制整備の義務強化
 従業員数300人超の事業者が従事者指定義務に違反した場合に、命令や罰則(30万円以下の罰金)が科されるようになります。また、立入検査権限も創設され、より実効性のある監督が行われます。さらに、労働者等に対する公益通報対応体制の周知義務も明示されます。

2. 公益通報者の範囲の拡大
 新たに、フリーランス(業務委託契約関係にある者やその終了から1年以内の者)も公益通報者として保護される対象に含まれました。これにより、公益通報を理由とする業務委託の解除なども「不利益な取扱い」として禁止されます。

3. 公益通報を妨げる行為の禁止
 従業員に通報しないよう求める合意をすることは禁止され、これに違反する合意等は無効とされます。また正当な理由なく通報者を特定しようとする行為も禁止されます。

4. 不利益な取扱いに対する罰則の新設・強化(←ここが重要)
改正法の中でも特に注目すべきは、公益通報を理由とする不利益な取扱いに対する規制の強化です。具体的には以下のような措置が講じられています。
・通報後1年以内の解雇・懲戒処分は「公益通報を理由としたもの」と推定される
 これにより、使用者側には「公益通報が理由ではなかった」と証明する責任(立証責任)が課されます。労働審判や訴訟での企業側の説明責任が格段に重くなったといえるでしょう。
・公益通報を理由にした解雇・懲戒処分には、刑事罰(6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、両罰規定)
 法人については、最高で3,000万円の罰金が科される可能性があります。

4つめの点は特に重要です。公益通報を理由とした解雇や懲戒処分が許されないのは当然のことですが、それとは別の理由で解雇や懲戒処分をしたい場合には、慎重に検討し、周到に準備を進める必要があります。トラブルになってからでは遅いので、専門家と相談しながら進めましょう。改正法の施行は、公布の日から1年6ヶ月以内で政令で定める日とされています。

関連記事

PAGE TOP

COPYRIGHT © SHINWA LAW OFFICE ALL RIGHTS RESERVED.