2026.04.27

5月病と退職を考える

 希望に満ちた新入社員もお疲れの時期に差し掛かりました
 人材不足の中せっかく採用した新人の退職は辛いものがあります
 社員のケアも人事労務の大切な仕事です。

 桜の花が咲くころ入社した新入社員も、新緑の5月を迎えるころには、新しい環境に慣れ始める一方で、心身の不調や将来への不安が表面化しやすい時期になってきました。いわゆる「5月病」(最近は年中メンタルの不調の話があるせいかあまり聞かれなくなりました)と呼ばれる時期でもあります。新しい環境へ適応しようとして心身ともに疲労する時期となっています。そんな新入社員の中には、「退職したいが言い出せない」という悩みも昔から少なくない数が存在していると思われます。

最近では、「退職代行サービス」と呼ばれる事業者が、そんなニーズを掬い取って大々的に事業展開するパターンが増えてきました。もっとも、今年に入り大手業者の「モームリ」が弁護士法違反(いわゆる非弁行為)で摘発されており、退職代行サービスの法的リスクも明らかになっています。弁護士資格のない業者が、報酬目的で法律事務(例えば未払い残業代や有給休暇の取得に関する交渉など)に関与することは認められておらず、利用者にとっても注意が必要です。

そもそも法律上、期間の定めのない雇用契約(正社員などをイメージしてください)であれば、退職の意思表示をしてから2週間で雇用関係は終了します。極端にいえば、書面で退職届を送付するだけでも足りるケースが多く、本来、退職そのものはそれほど難しい手続ではありません。なぜなら、労働者には職業選択の自由が憲法によって保障されているからです。

しかし、現実は必ずしもそう単純ではありません。「人手不足だから辞めさせない」「退職届を受け取らない」といった退職を認めようとしない対応により、退職を巡るトラブルは後を絶たず、労働関係の法律相談の中でも一定の割合を占めています。精神的な負担や職場の人間関係の問題から、自力での退職が困難となり、やむを得ず退職代行サービスに頼る方がいるのも実情です。よく自分でやったらよいじゃないかなどと言う声もよく聞きますが、それができないくらい追い詰められているのかもしれないということを想像してもらえたらと思います。

退職代行の利用者は、無責任な若者ではなく、実際には責任感が強く、周囲への影響を考えすぎるあまり、追い詰められてしまっているのではないでしょうか。

このようなケースは、職場内でのコミュニケーション不足や相談経路の乏しさから来ているのではないかと会社側も想像する必要があります。

会社としては、退職代行を「外部サービスの問題」としてではなく、会社内部の組織的の課題として向き合っていくことが重要になります。具体的には、上司以外にも相談できる窓口の整備、定期的な面談の実施、同僚同士のつながりを促す仕組みづくりなど、社員一人一人が孤立しない環境づくりが求められます。

さらに、退職の申し出があった場合には、これを不当に妨げることは避けなければなりません。引き止め自体は直ちに違法とはなりませんが、過度な圧力や拒否的対応はトラブルや損害賠償責任につながってしまうおそれがあります。会社としても、社員に対して冷静に事情を確認し、円満な解決を目指す姿勢が重要です。

人手不足の時代の中、せっかく入社してくれた社員を大切に育成するためにも、5月病に陥る社員の出ないよう、目配りの利いた組織づくりを目指しましょう。決して退職代行を頼まないといけない社員が出ないようにしてください。

以上

メルマガ登録

弁護士が執筆するコラムを、メルマガでも配信中。
実務に役立つ法律情報を、あなたのメールに直接お届けします。

メールアドレスを入力して
お申込みください。

ページトップへ移動