2026.08.24

ハラスメントの申告を受けたらどうする?

 先日、NHKが、番組出演者から性被害を受けた職員に対するその後の対応が不適切だったとして謝罪しました。

 職員は、元の職場に戻ると被害当時のことがフラッシュバックするとして別の職場での復職を求め、主治医や産業医も異動を提案していました。しかしNHKは「現所属での復職が原則」としてこれを認めず、実際に異動するまでには3年以上を要したとされています。外部の調査検討委員会は、被害の深刻さに応じた配慮がなされなかったことや、組織的な対応が欠けていたことなどを問題点として指摘しました。

この事案から分かるのは、ハラスメントについて会社に求められるのは、単に「事実を調べて、加害者を処分する」ことだけではないということです。

もちろん、ハラスメントの申告を受けたとき、事実関係を迅速かつ正確に確認することは重要です。厚生労働省の指針でも、相談者と行為者の双方から事情を聴き、必要に応じて第三者からも事情を聴取することが求められています。

しかし、事実確認にはどうしても時間がかかります。その間、申告者と被申告者が毎日同じ職場で顔を合わせる状態が続けば、申告者の精神的負担が大きくなることがあります。事実確認が完了していなくても、被害の拡大を防ぐため、申告を受けた段階で、必要に応じて申告者と被申告者を一時的に引き離すことを検討します。具体的にどのような方法をとるかは、当事者の状況や事案の性質に応じて臨機応変に対応します。

例えば、

・どちらかを一時的に在宅勤務とする
・勤務場所や勤務時間を分ける
・指揮命令系統を変更する
・被申告者に一時的な自宅待機を命じる

などの方法が考えられます。

 なお、調査前・調査中の自宅待機は「ハラスメントをしたから罰する」という処分ではありません。まだ事実関係が確定していない段階ですから、あくまで被害拡大の防止や調査環境の確保のための暫定的な措置として行うことになります。

 もう一つ注意したいのが、

「では、申告した人を別の部署に移せばよい」

と安易に考えないことです。申告者本人が異動を希望しているのであれば別ですが、そうでなければ、「被害を申告した側が職場を追われた」という結果になりかねません。ハラスメント相談をしたことなどを理由として、不利益な取扱いをすることは禁止されています。したがって、引き離しの方法を考える際には、まず申告者の意向を確認し、申告者に不利益を押しつけないことが大切です。

 さて、調査の結果、ハラスメントの事実が認められた場合には、行為者に対する懲戒処分等を検討します。もっとも、ここでも「処分をして終わり」ではありません。

同じ部署に戻せば、被害者はその後も行為者と毎日顔を合わせることになります。そのため、事案の内容に応じて、配置転換などによって両者を引き離すことも検討します。厚生労働省も、被害者への配慮や行為者への措置の例として、両者を引き離すための配置転換を挙げています。

この場合、被害者が異動を希望しているなどの事情がなければ、まずは行為者側を異動させることを検討するのが基本的な考え方になるでしょう。

もっとも、中小企業では部署の数が少なく、簡単に配置転換できないこともあります。その場合には、座席、勤務場所、勤務日、直属の上司を変更するなど、自社で可能な方法を考える必要があります。

NHKの事案では、性被害そのものだけではなく、その後の組織の対応によって職員にさらなる負担を与えてしまったことが問題となりました。

ハラスメントの申告を受けたときには、事実調査や加害者の処分に目が行きがちですが、被害を広げないための対応も重要です。

以上

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