2026.07.27

「契約書があれば安心」は本当?契約書を作成するときのポイント

 取引関係で紛争が生じたときに、「契約書はありますか?」―「いえ、とりあえず始めるということで、まだ作っていなかったんです・・・」このような会話をクライアント様との間で行うことは、年々減ってきているように思います。新たに取引を行う際に、契約書を締結することは、企業規模の大小を問わず、かなり定着しているという体感です。では、契約書があればとりあえず安心、なのでしょうか。

 「簡単な契約書のひな形をもらえませんか」とご相談を受けることは少なくありません。
もちろん、ひな形は契約書を作る際の出発点として便利ですし、我々弁護士も大いに活用しています。しかし、ひな形は、ある特定の取引を想定して作られています。ひな形が前提としている取引と、自社が実際に行おうとしている取引とがずれていれば、契約書があっても十分な役割を果たしません。それどころか、ずれた契約書をこの取引に当てはめるとどのように解釈するべきなのかと、余計に紛争の種になることもあります。

 例えば、同じ「業務委託契約」という名前であっても、単発の仕事なのか継続的な取引なのか、成果物を納品する契約なのか一定の業務を行う契約なのか、成果物はどのようなものなのかによって、定めるべき内容は異なります。

大切なのは、契約書があること自体ではなく、その契約書が今回の取引に合っているかどうかです。

取引に合っているか、という観点でいえば、もうひとつ、契約書の確認を依頼される際、「不利なところがないか見てほしい」と言われることもあります。

もちろん、自社に不利な条項がないかを確認することは重要です。しかし、契約書のリスクは、単に「不利か、有利か」だけで評価できるものではありません。

例えば、ある条項によって大きな損失が生じる可能性があるとしても、その事態が現実に起こる可能性が極めて低い場合があります。反対に、一見すると小さな不利益でも、日常的に発生する可能性が高ければ、取引全体に大きな影響を与えることがあります。

契約書を確認する際には、問題となる事態がどの程度起こりそうなのか、実際に起こった場合に自社が受ける不利益はどの程度なのか、そのリスクを受け入れてでも取引を行う価値があるのか、という点まで含めて評価することが必要です。

 契約書の作成・チェックには、弁護士の法的知識が役立ちます。しかし、弁護士からひな形をもらえば間違いないというものでも、取引相手から提示された契約書だけを渡して、すべてを任せればよいというものでもありません。

弁護士は法律の専門家ですが、クライアント様の事業内容や取引の現場を、最初からすべて理解しているわけではありません。どのような商品やサービスを扱うのか、取引の流れはどうなっているのか、どこでトラブルが起こりやすそうか、今回の取引で特に重視していることは何か、といった情報がなければ、効果的なチェックは難しくなります。

これは、社内で契約書を確認する場合も同じです。法務担当者だけで契約書を確認するのではなく、実際に取引を担当する事業部門と十分にコミュニケーションを取り、取引の内容や目的を共有することが重要です。

以上

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