コラム
労働者の過半数代表って?

会社と労働者(従業員)の関係では、労働者の過半数の代表者が必要になります。
過半数を代表するとはどういう意味でしょう。選挙でもするのでしょうか。
過半数代表といえるか争われた裁判例をもとに考えてみましょう。
会社と従業員の関係では、残業を可能にする36協定、変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制などいろいろな制度がありますが、従業員の過半数が所属する労働組合がない場合、「労働者の過半数を代表する者」と会社の間で内容を合意することが必要になります。なんとなく古参の社員が代表しているということにして書類を整えている会社も多いのではないでしょうか(そもそも合意の必要な制度がない会社は、別の問題があります)。
最近、「過半数代表者」の選び方が適切でなかったことを理由に、労使協定の効力が否定される裁判例があり、正直痛いところを突かれたなと思いました。
愛媛県の松山大学では、教職員会の選挙で過半数代表者を選出し、専門業務型裁量労働制の労使協定を締結していました。
選挙では493人の有権者に対し、立候補者1人への信任票は124票にとどまりました。ただし、投票しなかった人については「有効投票による決定に委ねたものとみなす」という趣旨の規定があり、これによって代表者が選出されていました。ほとんどの職員は、関心がないことからこのような規定が設けられていたのではと思われます。
高松高等裁判所は、2026年7月、上記の方法では過半数の支持が明確とはいえないとして、裁量労働制の適用を認めず、大学側に未払い時間外手当など計約1800万円の支払いを命じた一審判決を支持しました。
多くの会社では、厳密な意味での過半数代表が選ばれているわけではないように思うので、この判決は会社の業務に大きな影響を与えることではないかと思われます。
特に影響が大きいのが残業に関する「36協定」です。過半数代表者の選出に問題があり、その結果36協定が無効となれば、会社が適法だと考えて行わせていた時間外・休日労働について、労働基準法違反を労働基準監督署から指摘される可能性があります。
会社としては、次の5点をチェックポイントとして、一度確認してください。
- 会社が代表者を指名していないか
「人事部が○○さんにお願いする」「各部署の責任者から会社が一人選ぶ」といった方法は避けてください。理屈としては、あくまでも労働者側が自主的に選出する必要があります。
- 何のための代表者なのかを明示しているか
単に「従業員代表を選びます」ではなく、「36協定を締結する過半数代表者」など、その目的を明らかにして選出することが重要です。
- 過半数の支持が本当か確認しているか
投票、挙手、労働者による話し合いなど、過半数がその人の選任を支持していることが明確になる民主的な方法が必要です。「反対しなかった人は賛成とみなす」という処理には無効とされる可能性が高く注意が必要です。
- 管理監督者を代表者にしていないか
労働基準法上の管理監督者は、過半数代表者になることができません。「部長だから従業員を代表してもらおう」という選び方は危険です。
- 選出過程の証拠を残しているか
実務上、ここが非常に重要です。選出案内のメール、候補者の募集、投票結果、社内アンケートの結果など、「いつ、誰を対象に、どのような方法で選出したか」が後から確認できる資料を保存しておきましょう。裁判対策にもなります。
毎年同じとか、なんとなくこの人なんですという会社は要注意です。せっかくの協定が無効にされてしまうこともあります。
せっかく制度を設けるなら、後で無効になるような原因がなくなるよう気を付けましょう。
以上
関連記事
メルマガ登録
弁護士が執筆するコラムを、メルマガでも配信中。
実務に役立つ法律情報を、あなたのメールに直接お届けします。
メールアドレスを入力して
お申込みください。