2026.03.09

マタハラに注意!「悪気はなかった」は通用しません!

 去る2月27日、大阪地方裁判所は、会社に対して、マタハラを理由に慰謝料110万円を支払うよう命じました。

 妊娠・出産を理由とする不利益な取扱い、いわゆる「マタニティハラスメント(マタハラ)」について、改めて企業の責任が問われる判決が、2月27日、大阪地裁で言い渡されました。

判決では、妊娠を理由に産休取得を責める発言などを行ったことが人格権侵害に当たるとされ、会社側に110万円の支払いが命じられました。

 この事案は、決して大企業の特殊な例ではありません。むしろ中小企業だからこそ起こり得る、身近なリスクを示しています。以下、同日付配信の産経新聞ニュース記事より事実関係をご紹介します。

 判決によると、原告の女性は令和4年9月に水道修理会社へ就職し、その2カ月後に妊娠が判明しました。妊娠を報告したところ、年明けに関係者(当該女性の就職を紹介した男性のようです)から「俺の顔をつぶすんか」「産休は原告女性の幸せのためだけの休みやねん」などの発言を受けました。

 さらに、「産休を取るなら快く受け入れてもらうために休まず働け」と叱責され、そのような叱責が2日間、それぞれ約2時間にわたり続いたと認定されています。

 女性はその後退職し、不安症と診断されました。裁判所は、これらの発言には合理的理由がなく、女性の人格権を侵害するものであると判断しました。また、社長がその言動を肯定的に受け止めていた点も重く見られ、「良好な環境で働く権利」を侵害したと認定されています。

 男性側は、「協調性やチームワークが重要だと述べただけ」と主張しました。しかし裁判所はこれを認めませんでした。

 ここで重要なのは、発言者に悪意があったかどうかではなく、妊娠・産休取得を理由として精神的に圧力をかけたかどうか、女性が働く環境を害したかどうかが判断基準となっている点です。

 中小企業では、人員が限られているため、「今休まれると困る」という本音が出やすい状況にあります。しかし、その言葉が本人にとっては強い心理的圧迫となり、制度利用をためらわせる結果になれば、違法と評価される可能性があります。

 マタハラについては、平成26年10月23日最高裁判決(広島中央保健生協事件)において、女性労働者について、妊娠、出産、産前休業の請求、産前産後の休業又は軽易業務への転換等を理由として解雇その他不利益な取扱いをすることは違法であり無効とされており、それ以降、上司の発言や職場の対応を違法と認定する裁判例が広がっています。

 今回の大阪地裁判決も、その流れの中に位置づけられます。つまり、マタハラに対する司法の姿勢は年々厳しくなっているといえます。

 今回の判決で特に注目すべきは、社長が叱責を肯定的に受け止めていたことが、会社の責任を基礎づける事情とされた点です。

 つまり、経営者がその場にいなかったとしても、ハラスメントを容認する態度を取る、是正措置を講じない、相談体制を整えていない、といった場合、会社としての責任を問われる可能性があります。

 損害賠償額は110万円でしたが、訴訟対応の負担や企業イメージの低下を考えると、実際の経営ダメージはそれ以上です。また、企業にはハラスメント予防措置を講ずる義務があります。大がかりな制度を導入しなくても、次のような対策はすぐに実行できます。

  1. 妊娠・出産を理由とする不利益取扱いを認めない方針を明確にする
  2. 管理職に対して具体例を示した研修を行う
  3. 産休・育休の取得手続を文書化する
  4. 相談窓口を設け、外部相談機関の利用も検討する
  5. 問題が生じた場合は速やかに事実確認を行い、是正する

 特に重要なのは、「困る」という感情と、「言ってよい言葉」は別であると理解することです。

 今回の大阪地裁判決は、妊娠・産休取得をめぐる発言が人格権侵害にあたると明確に示しました。中小企業においても例外ではありません。

 人手不足の時代だからこそ、従業員が安心して働き続けられる環境を整えることが、結果として企業の持続的成長につながります。

 「知らなかった」では済まされない時代です。今一度、自社の体制を見直してみてはいかがでしょうか。

以上

メルマガ登録

弁護士が執筆するコラムを、メルマガでも配信中。
実務に役立つ法律情報を、あなたのメールに直接お届けします。

メールアドレスを入力して
お申込みください。

ページトップへ移動