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去る1月22日、最高裁がマンション管理組合の占有者性について初判断しました。

 区分所有建物の共用部分からの漏水被害について、管理組合へ損害賠償請求ができるのでしょうか。
 
 今や、マンション(区分所有建物)価格は高騰する一方で、マンションを終の棲家として購入される方も多いかと思います。
 マンションといっても、小規模のものから大規模のものまでありますが、タワマンと呼ばれる超高層マンションとなると、その戸数が1000にのぼるものもあります。もし共用部分の問題で自分の部屋が被害を被った場合、共用部分の所有者である他の区分所有者全員を相手に裁判をするしかないのでしょうか。考えるだけでも、ぞっとしますね。

 今回は、マンションの共用部分である外壁コンクリート躯体部分に亀裂が入っていたため漏水が発生し、その被害を被った区分所有者(Xさんとします)が、マンションの管理組合等を相手に損害賠償等を求めた事案について、令和8年1月22日、最高裁判所が、初めて、管理組合が損害賠償義務の主体となるとの判断を示したので、これをご紹介します。

 Xさんは、漏水により、補修費用や漏水が生じたことによる資産価値下落分の補償金等として約1400万円の損害を被ったと主張し、上階からの漏水であるとして上階の区分所有者で同室の住居人と、区分所有者全員で構成される当該マンションの管理組合を被告として訴えを提起しました。なお、当該マンションの管理規約には、管理組合がマンションの共有部分を管理し、その修繕を管理組合において行う旨の定めがあります。 
 争点は多岐にわたるのですが、今回注目される争点は、管理組合が民法717条1項本文の定める工作物責任を負う「占有者」に該当するのかどうか、という点でした。
 一審の東京地裁は、これを肯定し、管理組合に対して賠償を命じたのに対し、二審の東京高裁は、一審の判断を覆し、管理組合は「占有者」に該当しないとして賠償義務を否定したため、最高裁の判断に注目が集まっていました。
 最高裁は、民法717条1項本文の趣旨について、工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって損害が生じた場合、通常有すべき安全性を欠く状態にある工作物を事実上支配して上記損害の発生を防止すべき地位にある者に損害賠償責任を負わせることにあると述べたうえで、区分所有法の規定からすれば、区分所有建物の共用部分については、基本的に区分所有者の団体(管理組合)がこれを支配管理して通常有すべき安全性を確保していくことが予定されており、特段の事情のない限り、区分所有建物の共用部分を支配管理してその設置又は保存の瑕疵による損害の発生を防止すべき地位にあること、また、管理組合が区分所有者より共用部分の管理のための費用を徴収しているが通例であるところ、共用部分の設置又は保存に瑕疵があることによって損害が生じた場合には、管理組合の財産からその賠償をすることが、区分所有者の通常の意思に沿い、損害を被った者の保護にも資する、としました。
 そして、管理組合は、特段の事情のない限り、区分所有建物の共用部分について、民法717条1項本文にいう「占有者」に当たると述べました(なお、損害額等について更に審理を尽くさせるために原審に差し戻す判断となっています)。

 冒頭で述べましたように、大規模マンションが増えていくなかで、管理組合を工作物責任を負う「占有者」と位置付けたことは、被害を受けた区分所有者だけでなく区分所有者全体にとっても実際の感覚に沿った合理的な結論ではないかと思われます。

差し戻し審での損害額の判断も見守りたいと思います。

以上

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