職場での撮影に注意!
従業員が勤務中に同意なく撮影する行為は違法となりえます。会社は、適切な対応を!
一人に1台、いえ、2台以上のデジタルデバイスを持つ時代となりました。いまや、写真を撮影するのは、スマートフォンが当たり前。カメラを使う人は珍しくなりましたね。気軽に大事な瞬間を保存できるのは素晴らしいですが、これを同意なく他人を撮影するケースも少なくありません。女性のスカートの中を盗撮した等のニュースは皆さんも聞かれたことがあるかとは思いますが、職場の業務時間内に、同僚が業務している姿を撮影するのはどうでしょうか。
以下、職場での無断撮影が問題となった事例をご紹介します。
事案としては、ガソリンスタンドで働く従業員Yが、勤務中に、自分のスマートフォンで同僚の女性Xの姿(帽子、マスク、長袖、長ズボンを着用)を無断で撮影し続けたというのものです。
自分の姿を撮られていることに気づいたXは、上司に相談するも撮影行為は解消されず、心身症を発症し休職を余儀なくされました。
裁判では、撮影行為が不法行為(違法)にあたるか、会社に義務違反(安全配慮義務違反とは明言されていませんが同趣旨と思われます)があるか等が争われました。
裁判所は、撮影行為の違法性について、平成17年11月10日最高裁判決を引用し、「被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の人格的利益の侵害が社会生活上の受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべき」と述べました。
そして、Xは、本件ガソリンスタンドに勤務する一般人であり、同僚から無断で勤務中の姿を撮影することなど通常は想定も許容もしていないこと、撮影をしたいのであれば、Xに一言断ってから撮影することが常識的であるのに、Xの感情に十分配慮することなく、6日間にわたってXの姿を近い距離から繰り返し無断で撮影したことは、著しく不相当な態様であり、撮影の必要性も認められない、社会生活上の受忍限度を超えて、Xの人格的利益を侵害し、違法であるとしました。
また、会社は、速やかに関係者から事情を聞くなどして事実関係を確認し、事実関係を終えた後には、Xが更なる精神的苦痛を被らないよう、配置換えを行ってXがYに接触しないで休む体制を整えるなど、Xに対する配慮をしていく義務があったのにこれを怠ったとして、会社の義務違反を認めました。ただし、会社が、従業員に対して、勤務中に業務上必要のないデジタル機器自体の使用を禁止したり、制限するように言う義務までは負わないとされました。
隠れてかどうかは別として、同意のない撮影行為は、トラブルのもとです。冗談であったとしても、撮影されている側からすれば、撮影されたことも嫌でしょうし、撮影データをどうされるのか等不安はつきません。
撮影行為にとどまらずですが、業務中の従業員間でのトラブルを了知したならば、速やかに事実関係を確認して、会社として対応が必要なのかどうか、どのように対応するのが適切なのか、ご検討いただければと存じます。
以上





