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小林製薬の「紅麹」と製造物責任

 小林製薬が製造販売する「紅麴」による健康被害のニュースが連日報道されています。法的責任はどうなるのでしょうか。

 小林製薬が製造する「紅麹」を含有したサプリメントを摂取した方が腎臓疾患などを発症し入院したり最悪の場合には亡くなられたとのことです。本原稿を書いている時点では、強い毒性のあるプベルル酸が含有されていたことが判明しています。

 体が良くなると信じて服用していたサプリメントで、腎臓疾患を引き起こし、場合によっては死に至るというあってはならない事態になっているのですが、小林製薬は、どのような責任を負うのでしょうか。

 たとえば、サプリメントをドラッグストア等で購入した消費者は、販売店舗に対して売主としての責任を追及することができますが、そもそも論で、サプリメントを製造した小林製薬に対して責任を追及したいと思うはずです。となると、購入者は、小林製薬とは契約関係にないため、民法上の不法行為責任を追及することとなりますが、不法行為責任では、小林製薬の故意又は過失を主張立証しなければならず、製造方法等が不明な状況において、非常にハードルが高くなります。このような場合の被害者救済を図るために、製造物責任法(いわゆるPL法)という法律があります。

 製造物責任法(PL法)は、製造物の「欠陥」により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における「製造業者等」の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全は発展に寄与することを目的としています。

 「欠陥」とは、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、「製造業者等」とは、当該製造物を業として製造・加工・輸入した者や当該製造物に製造業者等として氏名等を表示した者や誤認させるような表示をした者等が含まれます。

本件では、サプリメントに本来含有されていないはずの有毒成分が入っていることが判明していますので、「欠陥」に該当します。

当該有毒成分と腎疾患との因果関係はこれから明らかになってくると思いますが、なぜサプリメントに有毒成分が含まれたのか、製造過程等における小林製薬の故意・過失を特定できなくても、製造物責任法により、小林製薬に対して損害賠償請求が可能となります。このように製造物責任法により賠償責任が認められた事例として、茶のしずく石鹸(小麦アレルギー)等が皆様の記憶にあるところかと思います。

 今後の小林製薬、関連業者、業界団体や厚労省等の対応が注目されるところです。

 これ以上の被害が発生しないように、また、被害者やご遺族に対して十分な救済がされることを期待します。

 また、製造業者である以上は、製造物責任のリスクを負っていることも事実です。自社製品に対して被害申告等があった場合にどう対応するか等を事前に準備しておくことや、PL保険(生産物賠償保険)への加入など、リスクマネジメントをされることをお勧めします。      

 以上

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