自宅を改修するために隣地を使用したいのですが・・・。
本年4月、新しい相隣関係を定める法律が成立しました(施行は2年以内とされています)。
中古住宅のリノベーションが流行っているようですが、家の増改築や修繕はよくある話ですね。
工事内容によっては、自分の土地だけでなく、隣の土地に立ち入らないといけないということもあるでしょう。隣地所有者からすんなりと同意をもらえればいいですが、あまり話したことがなく同意をもらえるのか不安な場合や、そもそも隣地所有者が不明の場合などもあると思います。
この点について、本年4月、民法を土地所有者の負担を軽減する内容に改正する法律が成立・公布されました。なお、改正法の施行は公布より2年以内とされていますので、実際にこのルールが適用されるのは令和5年4月頃と予想されます。
改正前の民法では、土地所有者は、障壁や建物の築造又は修繕を目的とする隣地の使用について、隣地所有者から「承諾」を得なければなりませんでした。つまり、「承諾」を得られなかったときは、わざわざ裁判をして「承諾に代わる判決」をとる必要があったのです。
これでは、土地所有者に負担が大きく、工事自体を躊躇することも多かったと思います。
そこで、改正民法は、「承諾」を得ることなく隣地を使用することができるとしました(209条1項)。とはいえ、無制限に使用を認めたわけではありません。
①隣地の使用に先立って、使用の目的、日時、場所及び方法を、隣地所有者及び隣地使用者(隣地を現に使用している者。賃借人はこれにあたります)に対して「通知」しなければなりません(同条3項本文)。
ただし、自然災害等により生命身体に危険が差し迫っている場合等は「あらかじめ通知することが困難なとき」として、隣地の使用を開始した後、「遅滞なく通知」すればよいとされています(同項但書)。
②隣地使用の日時、場所及び方法は、隣地所有者及び隣地使用者のために損害が最も少ないものを選ばなければなりません(同乗2項)。
③隣地所有者等が不明の場合には、隣地の使用後、所有者が判明したときに「通知」をすればよいとされています。
では、隣地所有者に事前の通知をしたところ明確に拒絶され、こちらが隣地を使用できないように施錠等をされてしまった場合、勝手に鍵を壊して隣地を使用することはできるでしょうか。
これについては、もちろん、NOです。こちらに隣地を使用する権利はありますが、それを妨害する違法な行為について自力で排除することまでは認められていませんので、ご注意ください。
その他にも相隣関係について多数改正がされています。いったんお隣さんとの関係がこじれてしまうと長引くことが多く、ダメージは大きいです。正しい法的知識をもったうえで適切に対応することが肝要ですので、お気軽にご相談いただければと思います。