債務者の預貯金情報を金融機関から取得できます!
例えば、売掛金を払ってくれないとき、裁判をして勝訴判決を得たとしても、実際に回収するには更に「強制執行」の申立てをしなければなりません。そして、強制執行においては、債務者の財産を特定して申立てをする必要があります。
しかし、売掛先がどこの銀行のどの支店に口座を持っているか、よく分からないケースが往々にしてあります。
従前から、このようなケースにおいては、弁護士会を通じた「全店照会」を行うのが一般的でした。しかし、全店照会に応じてくれるのは、メガバンクや大手地銀などが中心であり、得られる情報が限られていました。
昨年4月1日に施行された改正民事執行法では、第三者からの情報取得手続として、金融機関からの情報取得手続が新たに定められました。
この手続を申し立てることができるのは、次の2つのいずれかの場合です。
- 強制執行または担保権の実行における配当等の手続において、完全な弁済を得ることができなかったとき
- 知れている財産に対する強制執行を実施しても、完全な弁済を得られないことの疎明があったとき
また預貯金情報を得られる金融機関は、銀行、信用金庫、信用金庫連合会、労働金庫、労働金庫連合会、信用協同組合、信用協同組合連合会、農業協同組合、農業協同組合連合会、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、農林中央金庫、商工組合中央金庫、郵便貯金簡易生命保健管理・郵便局ネットワーク支援機構と多岐にわたっています。
夢のような(?)新制度ですが、留意点としては、この情報提供後に、裁判所から債務者に対して、情報提供命令発令が通知されることです。債務者としては、この通知を受けると預貯金の引出しに走るでしょうし、差押えとは異なり、口座がロックされるわけではありませんから、情報を得た後モタモタしていると、結局「空振り」に終わるということがありえます。したがって、この制度を利用するためには、多少の費用がかかっても、一気にたくさんの金融機関を対象にして申立て、情報提供を受けたら速やかに強制執行に移ることが必要です。