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債権回収~逃げ得は許さない!~の続き

裁判で勝訴判決を得ても、ただちに回収ができるわけではないことは以前にご紹介しました。
この点に関して、今年の5月17日、「民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律」が公布されました。
「逃げ得は許さない!」がどのように実現されているのか、ご紹介したいと思います。 

以前から、「財産開示」という手続が存在しました。
これは、債権者の申立てによって、裁判所が債務者に財産開示を命ずるというものです。
強制執行の対象となる財産を特定するにあたり有効といえそうですが、実はほとんど利用されていない手続でした。

というのも、現行法における財産開示では、債務者が裁判所に出頭せず、または虚偽の開示をした場合でも、30万円以下の過料の制裁があるのみで、あまり実効性がない(無視したり嘘をついたりても大したことにならないと思われがち)と言われていたのです。

今回、改正された点をまとめると大きくは2つあります。

まずは、債務者以外の第三者からの情報取得手続の創設です。
第三者とは、具体的には、①金融機関、②登記所、③市町村・日本年金機構です。
①金融機関からは、預貯金、上場株式、国債等に関する情報を、
②登記所からは土地・建物に関する情報を、
③市町村・日本年金機構からは勤務先に関する情報を、
それぞれ取得することができます。
ただし、③に関しては、養育費等の債権や生命・身体の侵害による損害賠償請求権を有する債権者のみが申立て可能です。
また、②・③については、財産開示手続では目的を達することができない場合にのみ申立てが可能です。 

次に、財産開示手続そのものの見直しも行われました。
確定判決等を有する債権者だけでなく、公正証書の場合でも利用できることになりました。
また、違反の場合は刑事罰(6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金)を科されることとなり、強制力が増したといえます。

たとえば、

  • どこに資産があるかは分からないが、隠し資産があると見込まれるとき
  • 養育費の支払いがストップしたが、転職したと思われるとき

などには、申立てを積極的に検討すべきであると考えます。 

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