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生殖補助医療に関する新法が成立しました。

昨年12月4日、生殖補助医療に関する新法が成立しました。70年以上にわたる生殖補助医療の歴史において初めての法律制定です。その内容は・・・・

晩婚化晩産化が進む現代において、人工授精や体外受精等をはじめとする生殖補助医療の果たす役割は非常に大きくなっています。菅政権は、不妊治療の助成額引上げ(将来的には保険適用)を最優先課題として取組むとし、その後、異例のスピードで、議員立法により、昨年12月4日、生殖補助医療に関する新法「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」(以下、生殖補助医療法といいます)が成立し、同月11日に公付されました(施行日は、第1条から第8条までは本年3月11日、第9条及び第10条については本年12月11日とされています)。

日本における生殖補助医療を遡れば、昭和24年に初めて第三者から提供された精子を用いた人工授精による赤ちゃんが誕生し、昭和58年に初めて体外受精による赤ちゃんが誕生したとのことで、70年以上にわたる歴史があるわけです。しかし、驚くことに、生殖補助医療やこれにより出生した子に関する特別な法律は存在しませんでした。つまり、民法の裁判例や解釈により一定の方向性を見出してはいましたが、明治時代に制定された民法やその解釈による解決には限界がありました。

そこで、ようやくではありますが、新しい一歩として、生殖補助医療法が制定されたのです。内容は、次のとおりです。

まず、生殖補助医療とは、人工授精又は体外受精若しくは体外受精胚移植を用いた医療をいいます。

同法は、生殖補助医療等の提供に関する国の基本理念、国の責務、医療関係者の責務、知識の普及等、相談体制の整備、法制上の措置等を定めました。

また、生殖補助医療により出生した子の親子関係に関する民法の特例として、①女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し、出産したときは、その出産した女性をその子の母とする(第9条)、②妻が、夫の同意を得て、夫以外の男性の精子を用いた生殖補助医療により懐胎した子については、夫は、民法第774条の規定にかかわらず、その子が嫡出であることを否認することができない(第10条)としました。つまり、母については懐胎出産した女性とすること、父については生殖補助医療の同意をしていた場合には夫とすることとしました。

さらに、付則として、同法では定められなかった事項(生殖補助医療及びその提供に関する規制の在り方、生殖補助医療に用いられる精子、卵子又は胚の提供又はあっせんに関する規制の在り方、生殖補助医療の提供を受けた者、精子又は卵子の提供者及び生殖補助医療により生まれた子に関する情報の保存・管理、開示等に関する制度の在り方)について、おおよそ2年を目途として検討のうえ法制上の措置等が講ぜられるものとしました。これらには、代理出産や出自を知る権利についての議論も含まれています。時の流れとともに、人々の価値観が多様化し、社会も変化していくなかで、どのようにルールを定めていくのか。人口減少が叫ばれ、先細りとまで言われている日本社会の将来にかかわる大きな問題です。皆様におかれましては、是非とも関心をもって議論を見守っていただきたいと思います。

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