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秘密録音と証拠の価値

言った言わないの争いは、しばしば、みられるものです。
争いを避けようと、秘密に録音することもよくみられます。
会話は、断片的な発言ではなく全体の中で意味を捉えることが必要です。

「あのとき、ああ言ったでしょ」、「いや、そんなこと言ってない」。

まるで夫婦げんかのようですが、日本では会社同士の取引でも、何も書類がなくやり取りして行われているケースがあります。人間の記憶は、時間とともに薄れたり、変化しますから、注文したものが届かない、違うものが届いたなどのトラブルは、どうしても起こってしまいます。自分の記憶に自信がない人は、契約書とまではいかなくても、メールやラインで、やり取りの内容を確認しておくのが良いでしょう。

さて、言った言わないを避けるために、録音をしようということは、皆が考えることです。

まず、最初に疑問に思うのは、こっそり録音するのは証拠として有効かということです。何となく、相手の承諾を得ないで録音することの後ろめたさからでしょうか、そのようなやり方は認められないのではないかという質問が良くあります。

答えは、こっそり録音しても問題ありません。民事訴訟法の証拠は、特に制限がありませんので、こっそり録音したものも有効です。ラインやメールのやり取りも、相手の承諾なく証拠で出せることと、本来的には変わりがありません。

現在では、スマホ自体に録音機能がついていたり、アプリで録音もできるなど簡単に会話を録音できるようになっています。昔は、電気街に行って録音の機械を買って、それでもうまく録音できずがっかりしたことを考えると、今昔の感があります。

さて、無事に録音できれば、完璧なのでしょうか。

よくあるのが、録音した発言の一部を取り出して、鬼の首を取ったように相手を責めるというものです。しかし、会話というのはキャッチボールですから、一つの発言が無人島のようにぽつんとあるわけではありません。こちらが話したことに対して、あちらが回答するというものですから、こちらが先に挑発的なことを言えば、相手もそれに応じてエキサイトしますので、発言も激しくなってきます。もめている二人のやり取りは、言葉のボクシングのようなもので、どちらかが相手をノックアウトするまで、終わることはありません。

そこで、録音を取るときには、予めどんなことを言って、どんな発言を引き出すか、自分も感情的にならないようにするなど、いくつかのこつがあります。

裁判所で録音を証拠として提出するときは、全部を提出すること、文章に起こしたものを提出することが求められます。

提出した側が無理に言わせたような録音は、かえって有害ですので注意しましょう。

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