どうする?自社株式の相続
預金と違って、頭割にできないのが不動産と自社株です。
不動産は売却できますが、非上場会社の株式は売却も困難です。
経営者が元気なときから、将来を見据えたアドバイスを行いましょう。
事業を始めた時は1円の価値もなかった株式が、長く事業を続けているうちに何十億、何百億の価値になるのが、会社というものです。もちろん、厳しい競争に勝ち抜かなければ、破産などによって市場から退場させられることになります。
会社が成功すると、その利益は最終的には株主のものになりますが、会社の株主が誰かを意識することは、普段は意外に少ないものです。通常、非上場の会社では、株主=経営者ということが多いからと考えられます。
しかし、どんな経営者もやがては現役を退く時がやってきます。そこで、しばしば起きるのが相続によって株式を取得した相続人間の争いです。相続法に基づいて分けると、一人で過半数を得ることができないこともあり、争いは多数派工作になって、気が付くとあんなに仲の良かった一族が口も聞かないことになってしまったりします。
相続に際しては、どのくらいの割合の株式を、次の経営者に集中させるのがよいでしょうか。
会社法上、社長(代表取締役)を選ぶのは取締役会であり、取締役は株主総会で選ばれます。したがって、過半数の株式を取得しておくことは絶対条件です。過半数に一株でも足りないと、会社の最低限の支配ができなくなってしまいます。
よく見られるのが50対50の割合で株主が存在し、会社の経営が前にも後ろにも進まない状態です。ある意味、一番まずい状態と言ってよいでしょう。全く経営上の決断ができず時間だけが経過して行くことになってしまいます。
さらに、会社法では、議決権の3分の2以上で決議できる事項があります。
よく問題になるのは定款変更、事業譲渡、相続人等に対する売渡請求決議などです。これらの重要問題については、法律上、決議の要件が厳しくなっています。したがって、できれば、3分の2以上の割合を取得していたいものです。
なお、会社法では4分の3以上の議決権での決議の場合もあります。
このように考えると、100パーセント株式を集中すればいいんではないかと思いますが、実際に他の株主から株式を買い取り資金の問題や、相続税の問題などもあり、悩ましいところがあります。
法律と会計・税務との間には、100%ベストな手段を取れないケースもしばしばみられるところです。どのような着地点を目指すのか、専門家と議論しながら進めることにになりますね。