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4630万円振り込まれたらどうする?

山口県阿武町役場が4630万円を誤送金しました。
振り込まれた人はネットカジノで使ってしまったようです。  
民事上刑事上、どんな問題が起きるでしょうか。

 山口県阿武町は、人口3000人、日本海に面した静かな町です。コロナ支援の給付金10万円が町内463世帯に配られることになっていました。ところが、誤って一人の口座に4630万円が振り込まれてしまったのです。その後の騒動は、連日ネット、テレビ、新聞、週刊誌で取り上げられており、ご存じのことと思います。

 振り込まれた若者は、ほとんどをネットカジノで使ってしまい、町役場は、返還請求の裁判(弁護士費用等も請求しています)を起こし、本人は逮捕され、ネットカジノの決済代行会社から3500万円が町役場に返金されるなど、ドラマもびっくりの急展開が続いています。さらには町役場に今年就職した職員が、ネット上で誹謗中傷を受ける(誤送金とは無関係な人です)などの騒動は広がる一方です。

 法律的にみると、預金が間違って振り込まれても、銀行との関係では預金は口座名義人のものであるというのが、最高裁判所の判例です。したがって、振り込まれた人は、預金を下ろしたり、送金したりすることができ、銀行はこれを止めることはできません。今回も、入金されたお金はほとんど全額使われてしまったようです。

 もっとも、町役場のように間違って送金した人は、間違いである以上、当然口座名義人に返還を請求することができます。法律的には不当利得返還請求と言うのですが、常識的に考えて当然の結論ですね。請求を受けた口座名義人は、返金の義務を負うわけですから口座にお金が入ったからといって適当に使ってしまったりしてはいけませんね。これもまた常識なのですが、今回は全部使ってしまったので、問題が複雑になっています。

 町役場が起こした返還請求について、口座名義人側は振り込まれた金額の請求を認めていますが、弁護士費用については争うようです。今後の展開がどうなるか興味深いところです(弁護士目線です)。

 刑事責任として、今回お金を引き出した若者の逮捕に至っていますが、果たして犯罪が成立するのかどうかは、微妙な問題があります。この点については事実関係の詳細を知るところではないのでコメントを控えますが、間違って送金された預金を引き出しても逮捕されたりする可能性があることは認識しておく必要がありますね。

 ほとんどの場合、間違って振り込まれたほうも迷惑なのですが、きちんと正常な状態に戻すことが大切ですし、社会のマナーということになるかと思います。決して宝くじに当たったわけではありません。

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