民法改正により賃貸借が変わりました
本年4月1日に改正民法が施行されました。今回は皆様に身近な賃貸借についてお話ししようと思います。第一弾として、賃貸借継続中のルールについてです。
賃貸借継続中のルールに関する改正点は、①賃借物の修繕に関する要件の見直し、②賃貸不動産が譲渡された場合のルールの明確化です。
①賃借物の修繕に関する要件の見直し
旧民法では、賃借物が損傷等し修繕しなければならない場合、賃借人は賃貸人に対して修繕を求めることができるとされており、賃借人みずからが修繕できるかどうかについて明確な規定はありませんでした。
そこで、改正民法第607条の2は、①賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしなかったとき、又は、②急迫の事情があるとき、には、賃借人は修繕をすることができるとしました。
また、みずから修繕を行った賃借人は、賃貸人の修繕義務が認められる限り、賃貸人に対して修繕にかかった費用を請求することができます(改正民法第606条第1項、第608条第1項)。
②賃貸不動産が譲渡された場合のルールの明確化
旧民法では、建物賃貸借において建物所有者が変わった場合、その後、誰が賃貸人になるのか、新しい所有者は賃借人に賃料を請求できるのかについて、規定がもうけられていませんでした。
そこで、改正民法では、賃借人が賃貸借の対抗要件を備えていた場合、賃借物である不動産が譲渡されたときは、賃貸人の地位は、原則として不動産の譲受人(新たな所有者)に移転するという規定を設けました(改正民法第605条の2第1項)。
不動産の譲受人(新たな所有者)が、賃借人に対して賃料を請求するためには、賃借物である不動産の所有権移転登記が必要である旨の規定を設けました(同条第3項)。
なお、旧民法では、資産の流動化等を目的として賃貸不動産が譲渡され賃貸人の地位を移転させることなく譲渡人のもとに留保させる場合、各賃借人の同意を得る必要がありました。そこで、改正民法では、不動産の譲渡人及び譲受人が賃貸人の地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、例外的に、賃貸人の地位は譲受人に移転しないとし、各賃借人から個別の同意を得る必要がなくなりました(同条第2項)
前二者は、これまでの判例法理を明文化したものですが、後者の賃貸人の地位の留保については新しい内容となっています。
他の改正点についても、今後、お話させていただこうと思います。