裁判手続のIT化 mints編
これまでにも何度かご紹介しているとおり,裁判手続のIT化が(ゆっくりではありますが)進んでいます。あまり関係のないこと,と思われるかもしれませんが,IT化が進むことによって,「時間がかかりすぎる」といわれる裁判手続が,多少なりとも利用しやすいものになるのではと思います。
裁判手続のIT化に関しては,e提出,e法廷,e事件管理という「3つのe」を段階的に進めることとされています。
2020年から,フェーズ1の一部として,Web会議システムを利用した争点整理(「e法廷」の一部)の運用がはじまり,ちょうど新型コロナの流行も重なって,かなり浸透してきました。弁護士としては,移動時間が減ったことで業務の効率は大幅にアップしました(反面,車窓から季節ごとの景色を眺めたり,地元のお店でランチを楽しんだりすることも減ってしまいましたが)。
今年の4月からは,「e提出」の一部として,民事裁判書類電子提出システム,通称mintsの運用が始まります。mintsは,裁判書類をインターネットで提出できるシステムで,24時間365日稼動し,①書面等の提出,②アップロードされた電子データの閲覧・ダウンロード・印刷,③受領書面の自動作成とアップロードによる提出が可能です。
既に大津地裁では試験運用が始まっているそうです。今後は知財高裁,東京地裁(商事部及び知財専門部)及び大阪地裁(知財専門部)でも運用が開始され,順次拡大される予定です。
さて,最高裁では順次,mintsの操作説明会を行っていますので,資料を入手して読んでみましたが,正直な感想を言うと,これなら今まで通りのやり方の方が良いかなあというところです。民事裁判では,主張を記載した準備書面のほかに,書証や証拠説明書などの書類を,一定のルールに従って整理し,郵送またはFAX送信により提出しています。準備書面の作成や,書証の選定は弁護士が行いますが,書類の整理や提出は事務職員に任せることが多いです。しかし,mintsは,1つの事件に多数の弁護士・事務職員が関与するには少々使いにくい作りになっているようです。また,A4サイズしかアップロードできないという制限もあります。
とはいえ,mintsは,現行の民事訴訟法の枠組みの中で使用することを想定した,過渡期用のシステムです。今後のmintsの運用を通じて,使い勝手のよいシステムと改正民事訴訟法ができあがっていくことに期待したいと思います。