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保育園児童虐待に学ぶ危機管理

 静岡県の保育園で1歳児の虐待により保育士3人が逮捕されました。
 保育園側も口止めを求めるような行動に出て問題です。
 不祥事が発覚したときはどう対応すべきでしょうか。

 静岡県裾野市の保育園で1歳児の虐待が問題になっています。ニュースの報道を最初聞いたとき、しつけがちょっとやりすぎなったのかなと思った方も多いことでしょう。ところが続報を見ていると、寝かしつけた園児にご臨終ですと発言、カッターナイフを示して脅す、足を掴んで宙づりにするなどなど、信じられないような事実が次々に明らかになっています。とうとう3人の保育士が逮捕されたのですが、3人はしつけだったと述べているということです。

 上記の行為は犯罪ですが、社内のいじめが問題になるときと同様に、問題行動がおかしいという指摘を受けないような社内の空気があったことに経営者は学ぶ必要があります。おそらく、今回の保育士の行動も、他の保育士が気がついていたはずであり、複数の保育士が繰り返し問題行動をとっていることから問題が明らかになったことからすると、相当根深い問題が社内にあったと考えられます。経営者の仕事の大切なことの一つに、社員が生き生きと働ける職場を作ることがあり、園長や、さらには理事長(社長)の責任には重いものがあると言わざるを得ません。
 園側にも問題があると感じることは、事実を隠そうとするためか園が他の保育士に対し誓約書を書かせていることです。ニュース等によると、園長は、誓約書の意味について言い訳をしていましたが、明らかに口止めの意味があったとしか思われません。保育園のある裾野市の市長も、証拠隠滅で刑事告訴すると激怒です。
 園側の発表が遅れていたことと合わせて、危機管理の対応としては、園側のこれまでの行動は大失敗です。
 まず、事実を速やかに確認し、確定した事実は公表するとともに、これ以上の被害が拡大しないための応急措置と被害への対応を取ることが、危機管理で最初に行うべきことです。ところが、園側の対応を見ていると、問題の重大性に気がつかず(この時点で、組織の風土と言うか、虐待が放置されてしまうような組織の病気を感じます)、なるべく園内でことを収めよう、ごまかそうという姿勢を感じます。結果的に、さらに余計なことまで突っ込まれて、逮捕者まで出る事態となりました。

 園に危機管理の初動をアドバイスできる顧問弁護士などはいなかったのでしょうか。危機を乗り越えられるかどうかは、経験のある弁護士などといかに普段からコンタクトを取っているかが重要だと、改めて感じます。

以上

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