インボイス制度スタートで、免税事業者に支払う代金を減額できる?
インボイス制度の導入まであと1年を切りました。インボイス制度が実施されると、課税事業者は適格請求書(インボイス)がなければ、仕入税額控除ができません。
そして、免税事業者はこのインボイスを発行することができません。
そうすると、課税事業者が免税事業者と仕入取引をする場合は、課税事業者が消費税分損をすることになってしまいます。
そこで、代金を消費税相当分(10%)引き下げることはできるでしょうか。
どのような条件で取引をするかは、本来当事者の自由なのですが、現実には両当事者の力関係に明らかな差があるケースが多々存在します。
そのような場合には、独禁法による規制に気を配る必要があります。公正取引委員会の「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」では、「取引上の地位が相手方に優越している事業者が、取引の相手方に対し、一方的に、著しく低い対価又は著しく高い対価での取引を要請する場合であって、当該取引の相手方が、今後の取引に与える影響等を懸念して当該要請を受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることになり、優越的地位の濫用として問題となる」とされています。
ここで考えてみると、仕入先の免税事業者においても、さらに仕入や経費の支払をしているはずであり、その支払においては消費税相当額を負担していることになります。
これを無視して、一方的に代金を10%引き下げるのは、「著しく低い対価」での取引を要請していることになるでしょう。免税事業者としては、要請を受け入れざるを得ないと思われますので、優越的地位の濫用にあたる可能性が高いと考えられます。
他方で、仕入先の免税事業者が負担する消費税相当額も考慮しつつ、免税事業者と十分に協議した上で、消費税相当額の一部を減額するのであれば、そのような懸念は低いと思われます。
実際には6年間、免税事業者からの仕入につき、一定の税額控除を認める経過措置が設けられていますので、その間に免税事業者との間でよく協議を行う必要があるでしょう。