裁判手続のIT化
裁判手続等のIT化については、平成30年3月に「裁判手続等のIT化に向けたとりまとめ―「3つのe」の実現に向けて」という検討結果がとりまとめられました。
その実現に向けては、3つのフェーズに分けて順次新たな運用を開始していくことになっています。
来年の2月ころから、一部の裁判所で「フェーズ1」の運用がはじまります。
まず、「3つのe」とは、①e提出、②e事件管理、③e法廷を指します。
現在の運用はこの対極にあり、
- 裁判書類は紙ベースのものを裁判所に持参、郵送するのが原則で、一部FAXの使用が可能ですが、今時FAX・・・とベンチャー企業の方に驚かれることも少なくはありません(もっといえば、データのやりとりも、10年くらい前まではフロッピーディスクが主流でした)。
- 事件記録は紙ベースで行われ、関係者の日程調整も電話かFAXという原始的な方法によっています。
- 裁判の期日には双方の出頭が原則。電話会議による方法もありますが、顔が見えないためコミュニケーションが円滑とは言いがたい場面もあります。
このような不都合を解消し、裁判手続をより利用しやすくするとともに、裁判にかかる時間を短縮するためにも、3つのeの実現は不可欠であると思います。
ただ、全面的に導入するには、法改正が必要な部分もあり、まずは「フェーズ1」として、現行法の下で、ウェブ会議等のITツールを利用した争点整理の新たな運用がはじまることになりました。
まずは、知財高裁と、東京・大阪・名古屋・広島・福岡・仙台・札幌・高松の各地裁で導入されます。
ウェブ会議では、お互いに顔を見ながら話をすることもできますし、画面共有機能を活用して、同じ文書や図面などを確認しながら協議をすることもできます。
電話会議にありがちな、裁判所と相手方代理人の雰囲気が分からない・・・という漠然とした不安や、どの資料の何について話しているのかを確認するのに時間がかかる・・・という無駄を取り除くことが可能です。
余談ですが、ウェブ会議システムとしては、「Microsoft Teams」が利用される予定になっています。
当事務所でも、各拠点を結ぶ会議ではMicrosoft Teamsを使い始め、各自使い慣れるように頑張っています。
3つのeが完全に実現するころには、世の中の技術が更に進んで、早くも時代遅れになっているのではないかという懸念を心の片隅に抱えつつ、迅速な裁判手続の実現に向けて、弁護士としても努力したいと思います。