社員がカルトにはまったら
安倍元首相狙撃事件は、宗教の自由について改めて考えさせられる出来事でした。
宗教の自由は、憲法で保障されています。
宗教の自由の尊重と社員の生活を守るバランスが問われています。
7月8日に起こった安倍元首相の狙撃事件は、日本国中に衝撃を与えました。同時に、犯人の母が加入していた統一教会が事件の動機になっていることにも、スポットが当てられました。
ここでは、統一教会がどうこうではなく、社員が極端にカルト的なものにのめり込んでしまったりした場合の対応について考えてみましょう。
人は皆、それぞれの思想信条を有しており、宗教を信じてもいます。宗教を信じる自由は、憲法20条にも書かれている基本的人権であり、最大限尊重されるべきものです。
ですから、社員がカルトと呼ばれるものにのめり込んでしまったとしても、基本的には会社にはそれを止める権利も義務もありません。業務命令として、特定の何かを信じるなということはできないのです。また、社員が給料を全額何かにつぎ込んでいても、会社が注意をしないといけないというものでもありません。
ただし、社員がカルトにのめり込んでしまうあまり、他の社員に影響を及ぼして会社の業務に影響を与えたりするようなことは許されるものではありません。例えば、執拗にカルトの集まりへの参加を促したり、断っているにもかかわらずカルトの本を勧めたりするようなことです。
この場合、就業規則に基づいて、会社の秩序を乱す行為に対して、注意(けん責)などの処分を取ることができます(当然ですが、規則がなければできません)。それでも、改まらない場合、出勤停止、解雇などへと進むことにならざるを得ません。厄介なことに、カルト的なことが信念になっているケースが多いので、会社をあっさりとやめてしまったりすることが往々にしてあることです。
周りに影響を与えなくても、社員がカルトにのめり込んで、仕事がおろそかになった場合はどうでしょう。業務が滞っている場合も就業規則に基づく処分はできますが、処分により、社員のパフォーマンスが元に戻ることは難しいと予想されます。そうすると、社員をカルトから救出したいと思う社長も多いと思いますが、ことは簡単ではありません。この場合、顧問弁護士等外部の専門家に相談することが有効であることを覚えておきましょう。
最後に、社員がカルトにはまるのは、ほんのささいなきっかけによります。まじめな人ほどはまってしまう傾向もありますので、日ごろから社員のことをよく見ておくことが、結局一番いい対応方法になると思います。