カスタマーハラスメント対策について
クレームは宝の山,お客様は神様,などという言葉の陰で,顧客からの過剰なクレーム,暴言,暴力などの対応はあまり語られてこなかったと思います。
しかし,カスタマーハラスメント対策をきちんと決めておくことによって,従業員を守り,また正当なクレームに対する対応を向上させることが可能となります。
まもなく,カスタマーハラスメントへの対応マニュアルが発表される見込みです。
令和2年1月に厚生労働省が公表したパワーハラスメント防止指針では,「カスハラ」=カスタマーハラスメントについても言及されました。
すなわち,事業主の望ましい取り組みとして,
(1)相談に応じ,適切に対応するために必要な体制の整備
(2)被害者への配慮の為の取組(被害者のメンタルヘルス不調への相談対応,著しい迷惑
行為を行った者に対する対応が必要な場合に1人で対応させない等の取組)
(3)他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑
行為による被害を防止するための取組(マニュアルの作成や研修の実施等,業種・業態
等の状況に応じた取組)
が紹介されています。
被害者も加害者も社内にいるという典型的なパワハラと異なり,カスハラは,顧客から行われるものであるため,発生を予期したり防止したりすることが難しいという特徴があります。そのため,パワーハラスメント防止指針にカスハラが盛り込まれたことに,ちょっとした違和感を覚えた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし,カスハラによって,対応にあたる従業員の心身への負担が高まり,休職・離職につながりかねず,企業にとっても,カスハラ対応に手を取られて他の業務が手薄になるなど影響が大きいものです。対応する従業員にとっては,「会社が守ってくれない」ことが最大のストレス要因となりうるともいわれ,逆にいえば,カスハラ対策について企業がしっかりと方針を決めておくことで,従業員が安心して対応にあたることができるわけです。
現在,関係省庁連携会議において,「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」の検討が進められており,先日その案が公表されました。
案では,カスハラ対策の基本的な枠組みとして,
(カスハラを想定した事前の準備)
① 事業主の基本方針・基本姿勢の明確化,従業員への周知・啓発
② 従業員(被害者)のための相談対応体制の整備
③ 対応方法,手順の策定
④ 社内対応ルールの従業員等への教育・研修
(カスハラが実際に起こった際の対応)
⑤ 事実関係の正確な確認と事案への対応
⑥ 従業員への配慮の措置
⑦ 再発防止のための取組
⑧ ①~⑦までの措置と併せて講ずべき措置
の8項目が紹介されています。
この③の対応方法,手順の策定をどのような内容にするかが,対策のコアの部分になると思われます。もちろん,カスハラの内容は千差万別ですので,あらかじめすべてのケースを想定しておくことは不可能ですが,できるだけ詳しい内容にしておくことで,落ち着いた対応ができるようになります。過去の社内の対応事例などをもとに内容を検討していくことになるでしょう。
マニュアルが正式公表されましたら,また詳しくご紹介したいと思います。