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ジャニーズ事務所にNO!と言えなかった日本会社。

 日本取締役協会は未成年者に対する性加害に加担しないためのガバナンスコードを策定することを発表しました。

 ジャニーズ事務所(現在は名称を変更)の創業者故ジャニー喜多川氏による未成年者への性加害問題がようやく社会的な問題として認識され、幼少期には声をあげられなかった被害者が声をあげることができるようになりました。

 2002年に週間文春が故ジャニー喜多川氏による未成年者の所属タレントに対する性加害の事実ついて記載した記事が名誉棄損にあたるとして民事裁判となりましたが、東京高裁は名誉棄損を認めた一審の判断を覆し、「少年らが逆らえばステージの立ち位置が悪くなったりデビューできなくなるという抗拒不能な状況があるのに乗じ、セクハラ行為をしているとの記述については、いわゆる真実性の抗弁が認められる」等と述べ、性加害に関する部分について名誉棄損を否定しました。

 当時、この裁判についてニュースが流れたことは記憶にありますが、非常に小さい扱いであり、なぜもっと取り上げないのかと不信感を抱いた記憶があります。
忖度なのか、圧力なのか、人権意識の低さなのか・・。

 今回の一連の出来事も、イギリスBBCによるドキュメンタリー番組「Predator: The Secret Scandal of J-Pop(J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル)」が放映され全世界にこの問題が伝えられたことから、大きな動きとなりました。
上場企業をはじめ多くの企業が、ジャニーズ事務所とスポンサーシップ契約等を締結していましたが、解約するなど、その決断を迫られる事態となりました。
本年9月23日、日本取締役協会は、未成年者に対する性加害問題と企業のコンプライアンス姿勢に関する緊急声明を出し、未成年者に対する性加害に加担しないための新たなコーポレートガバナンス標準コードを策定する予定であることを述べました。

同声明において、次のようなことが述べられています。

「私たち経済人は、本件問題を通じて、人権、取り分け未成年者を性加害から守るためのコンプライアンスとガバナンス体制についてより普遍的かつ重い課題を突き付けられているのではないか。」

「先進諸国において未成年者に対する性加害行為を「魂の殺人」と呼ばれるほど極めて重大な犯罪行為とみなす価値観やそれを反映した法体系やコンプライアンス体系が存在するにもかかわらず、日本社会が本件問題に蓋をし続けてきたことに対する強い違和感と問題意識があったものと思われる。」「日本企業の多くにおいて、人権に関するパフォーマンスは平均点以下とされており、“人権後進国”の誹りを免れない現状にあるのだ」

人権に対する意識は、簡単に醸成できるものではありません。しかし、私たちの日々の生活、仕事など、身近な場面で、本当にそれでいいのか、自分はどう感じるか、と立ち止まって思考することができれば、自ずと育っていくものであるとも思います。

日本が人権先進国になったと言われる日が来るのを目指したいです。       

以上

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