折半出資をすべきでない理由
誰かと共同で会社を立ち上げ、事業を始めようとするとき、出資の比率についてどのように考えたらよいでしょうか。結論から言うと半分ずつ出資をするのは避けるべきです。しかし、「半々」は「平等」で「平和的」に思えるのか、このような選択をしてしまうケースもあるようです。最近話題になった裁判例を紹介します。
X社は、自社の業務拡大をめざし、A氏と共同出資(折半)してY社を設立しました。Y社の代表取締役にはA氏が就任、Y社はX社の専属代理店として、X社製品の販売事業を行ってきました。
ところが、A氏はY社で新規事業を行おうと計画し、そちらの研究調査に力をいれはじめ、X社製品の販売が振るわなくなったことから、X社とA氏との間で紛争が生じました。X社製品の専属代理店契約は解消したものの、その清算をめぐって訴訟(別訴)となり、その間、Y社の売上もゼロとなりました。別訴の中で、X社が保有するY社株式の処理を含めた和解の話合いがありましたが、結局合意には至りませんでした。そこでX社は、Y社の解散を求めて訴訟を提起しました。
会社の主要な意思決定は株主総会における多数決で行われます。上記の事例のように双方が50%ずつの議決権を有していると、対立状態となった場合、一切の意思決定が行えなくなります。合併や解散、事業譲渡などといった会社の根幹にかかわることはもちろん、役員の選任、決算の承認、配当などもできません。
このような状態に陥ってしまった場合は、話合いにより共同出資関係を解消する(つまり、どちらかが他方の保有株式を買い取る)ことを目指すのが一般的ですが、強制的に解消する手段はないので、双方が納得しない限り実現できません。そして、いったんもめ始めると、双方が納得する条件を探るのが非常に困難となることは、想像に難くないと思います。
そこで最後の手段として、X社が求めたような解散請求という制度があります(会社法833条1項)。上記の事例では、解散請求が認められました(東京地裁立川支部令和4年9月9日判決)。
もっとも、折半出資でデッドロック状態であれば解散請求が全て認められるわけではありません。上記の事例は、Y社の売上もなくなり、取引債権者や金融債権者もいない状態で、Y社が消滅しても社会的損失が大きくないと判断され、解散請求が認められています。逆に言えば、デッドロック状態に陥ったことで、会社の存在意義がなくなってしまったということですね。
せっかくはじめた事業がこのような状態に陥るのは大変に勿体ないことですから、共同出資の比率については、どんなに信頼できる相手であっても、不平等にしておくべきです。
以上