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経営上の理由で人員を削減したいのですが、どうすればよいですか。

 整理解雇の有効性はかなり厳しく判断されます。

 アメリカではAmazonやグーグル親会社が1万人規模の人員削減を発表する等IT業界や金融業界で大規模な人員削減が予定されています。日本国内でも大手損保が6000人を超える人員削減を発表しました。
 人員削減といっても、希望退職を募集するケースもあれば、派遣契約の終了、パート・契約社員の雇止め、整理解雇を行うなど方法は様々です。新規採用の停止も人員削減の一つです。
 この点、従業員の同意が前提となる希望退職は、退職金を割増しすることが多いため、コストを伴います。となると、コストを伴わない方法で人員削減したい・・となりますが、そう簡単ではありません。

 今回は、人員削減の手法の一つである整理解雇について取り上げます。

 整理解雇とは、企業が経営上の必要から人員を削減するために行う解雇であり、普通解雇に位置付けられます。
 普通解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認できない場合には、権利の濫用として無効となります(解雇権濫用の法理)。

整理解雇が解雇権の濫用にあたるかどうかは、以下の4つの要素が考慮されます。

①人員削減の必要性、②使用者が解雇回避努力をしたこと、③被解雇者の選定に妥当性があること、④手続きの妥当性、です。

①(人員削減の必要性)については、経営上の十分な必要性があることとされ、赤字経営や債務超過に至っていない、黒字経営であったとしても経営の合理化や競争力強化を理由に肯定されるケースもあります。

②(解雇回避努力)については、解雇という手段をとるまでに、他の考えられる手段をとったかどうかが問われます。たとえば、新規採用を停止する、役員報酬をカットする、賞与を減額・不支給とする、時間外労働を削減する、希望退職者を募集する等です。すべての措置をとることまでは求められませんが、当該企業の規模や業種等を考慮して具体的に判断されます。

③(人選の合理性)については、整理解雇の対象者を決める基準が客観的かつ合理的で、その運用も公平であることが求められ、恣意的ではないことが必要です。

④(手続きの妥当性)については、労働組合や労働者に対して、整理解雇の必要性や具体的な内容を十分に説明し協議することが求められます。

 以上からもお分かりになるように、整理解雇が認められるのは容易ではありません。
 人員削減を考えておられる場合には、是非とも、弊所までご相談いただき、その手法も含めて共に検討させていただければと思います。

以上

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