減給処分の限界
従業員に非違行為(就業規則などに定められた服務規律の違反)があったときに,どのように対応したらよいでしょうか。
「2か月間,給料1割を減給したいのですが・・・」というご相談をときどきいただくのですが,このようなことは可能なのでしょうか。
企業不祥事のニュースなどで,「取締役の報酬を3か月間2割減額」などと報じられることでイメージがついているのでしょうか,従業員による不正などの非違行為に対しても,「2か月間,給料1割の減給にしたい」というご相談があります。
しかし,給与は労働者の生活の糧となるものですから,簡単には減額することはできません。労働基準法では,「労働者に減給の制裁を定める場合においては,その減給は,1回の額が平均賃金の一日分の半額を超え,総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」と定めています。したがって,非違行為が一つであれば,給料の1割を減額することはできませんし,2か月にわたって減給することもできません。
ここで注意していただきたいのが,いわゆる罰金制度です。遅刻したら1回3000円罰金,電話を5コール以内にとらなかったら2000円罰金・・・など。多くの方は「そんな会社あるの?」とびっくりされるかと思いますが,あるんです。
少ない人数で客商売をまわしていくには,それくらい厳しくしないと,お客様にちゃんとサービスを提供できない,売れるチャンスを逃してしまう,ということのようです。ニーズとしてはそうなのでしょうが・・・残念ながら,上記の労働基準法の制限の関係で,見直しが必要になります。
このように見てみると,「減給処分」は,響きは重いですが,あまり労働者には大きなダメージにはならなさそうですよね。皆さんの会社の就業規則を一度確認していただきたいのですが,まさにその通り,減給処分は懲戒処分の中では比較的軽い処分です。減給処分よりも重い処分として「出勤停止」があります。出勤停止はその名のとおり,働かせない(=その分給料が発生しない)ということで,こちらについては,減給処分のような法律上の上限の定めはありません。
そういえば,お客様の就業規則を拝見したときに,「出勤停止」が定められておらず,相当の処分を検討するにあたって困ったことがありました。もちろん,就業規則にない処分はできませんし,重すぎる処分も無効になりますから,軽い減給処分に留めざるを得ないということになります。「出勤停止」の処分が就業規則に定められているかも,一度チェックしてみてください。
以上