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セクハラ、パワハラ、マタハラそしてカスハラ

 顧客等からの理不尽なクレームすなわちカスタマーハラスメントが問題になっています。東京都が条例でカスタマーハラスメント対応の条例を作ろうとしています。

お客様は必ずしも神様ではありません。

 人と人がわかりあうことが難しいことは、夫婦や親子でも仲良くできるとは限らないことからも明らかです。まして、赤の他人が相手に気に入らない場合に我慢することはとても難しいことです。とても変な人、機嫌の悪い人はできるだけ避けたいものですが、仕事をしていると顧客(カスタマー)が相手だと避けて通ることができません。特に、不特定多数を相手とする小売などの業種では、気持ちのいいお客さんばかりとは限りません。大きな声を出しつ付けたり、何度も何度も同じ話を繰り返したり、長々と説教をしたり、嫌なら帰ればいいのにと思われる顧客(カスタマー)は、けっこういます。

 問題はどこまでが正当な言い分(クレーム)で、どこからがいちゃもん(ハラスメント)なのかということになります。当然、会社側に落ち度がある場合もあって、正当なクレームに対しては誠実に対応する必要があります。そして、現場で対応する社員としては、顧客に対して、お前はクレーマーだから相手しないとは言いにくく、ついつい後手後手に回ってしまい、クレーマーはエキサイトし、社員はうつ病になってしまいます。

 大げさな話に思うかもしれませんが、ある労働組合がアンケートを取ったところでは、実に社員の70%が説教、威迫、脅迫から金品の要求、土下座の強要などあってはならないことを言われています。このようなカスタマーハラスメントにより、労災認定を受けた人は過去10年間で89名、うち29名は自殺(未遂含む)にまで至っています。労災認定は重大な事象を扱っているので氷山の一角と考えられ、表に出ないものは数限りなくあるとみて間違いないでしょう。

 東京都では、昨年からカスタマーハラスメントの条例制定に向けて検討が行われており、第4回の会議が令和6年4月22日に開催されました。早晩、条例が制定され、他の地方自治体でも東京都に倣って条例の制定に動き始めることと思います。

 カスタマーハラスメントは、セクハラ、パワハラ、マタハラと比べて組織内部だけのことではなく、外部(顧客)と内部(会社)の間で問題になるところに他のハラスメントと異質な面があります。しかしながら、誰かを傷つけてはいけないという意味ではハラスメントとして認められるべきものであり、会社としては、大切な社員を守るために対策を講じておく必要があります。  まずは、現場任せにせず、社長自らが先頭に立って社員を守るために何ができるのかを考える(その第一歩は前線の社員を孤立させないこと)ことが大切です。人材確保が困難な中、やっとの思いで採用した社員をクレーマーの餌食にならないよう守ることが大切です。

以上

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