会社の調子が悪いから社員に辞めてもらいたい、、、
経営危機になると社員に辞めてもらい経費を削減したくなります
解雇を一方的に言い渡すことはできません
解雇の前に、どんな方法を検討したかが問題になります。
あー、もうあの人には辞めてもらいたい!
新型コロナウイルス感染症の影響で、会社の売上は大きく減少。交際費などの(無駄な?)経費を削っても赤字は確実。粉飾決算をするわけにもいかず、銀行に決算書を出せば倒産の危機を迎えそうだ。
夜も眠れないくらい悩む経営者に対し、毎月一定額の給与をもらっている社員の危機意識はどうしても薄いものとなりがちです。なかでも、仕事のできない社員ほど危機意識の共有ができないため、経営者から見ると、採算が取れていない!こいつがやめてくれたら収支が改善するのになどと、もやもやは止まりません。
あの人が辞めてくれたらよいのにという思いは、いつしかあの人を辞めさせたいという強い気持ちに代わり、ある日突然、「あなたを解雇します」という通知に繋がりがちです。ところが、黙って解雇を受け入れる社員は少なく、ネットで情報を検索して弁護士を代理人に立てて、解雇無効の裁判や労働審判を申し立てます。
人生初の裁判に驚く経営者は、弁護士との打ち合わせや裁判所の無理解に嘆きながら、疲れ果てて和解するというのが良くあるパターンです。
最近の裁判例でも、経営不振から社員を解雇した会社が、一方で社員を解雇しつつ、他方で新しい社員を採用したり(優秀な社員に入れ替えたかったのでしょう)、優秀な有期雇用の社員は契約を更新した事例で、社員の解雇を無効としています。
業績が不振の場合などに、社員に辞めてもらうことを整理解雇と呼びますが、①人員削減の必要性、②解雇回避努力の履行、③人選の合理性、④手続きの妥当性などが、厳しく問われます。先の裁判例でも、①人員の削減について従業員数の変動から本当に強制的に辞めさせる(解雇)が必要なのかが問題になり、②給与の削減など解雇という手段を取らなくてよいかどうかが問われ、③人選や④手続についても慎重に行うことが求められています。
この点、グローバルな視点で見ると金銭的解決により解雇を認める国が多くなっており、日本は世界でも屈指の労働者保護がなされていると言えます。
経営者としてはできのいい人だけで働いてもらいたいのは山々ですが、現実にはなかなか社員を辞めさせることはできません。日頃からどのような会社を作っていくのか計画的に検討しておく必要がありますね。