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内部告発者を保護する法律をご存知ですか。

会社の不祥事を是正し国民生活の安心や安全等を図る制度として公益通報者保護法があります。昨今、企業の不祥事が内部告発により明らかにされることも少なくありません。内部告発者に対する保護はどのようなものでしょうか。

三菱電機において、鉄道用空調装置などの不適切な検査が長年にわたり組織的に行われてきたことがニュースとなっています。遅くとも1980年代より架空のデータを作成する専用プログラムを用いていたとのことであり、関与者は複数人となると思われます。

長年にわたり、従業員や関係者は明らかに不正を知りながらも声を出せなかった、出さなかったわけですが、これによる影響は相当大きくなると予想されます。

このような企業不祥事による国民への被害拡大を防止するために通報する行為は、正当な行為として保護されなければなりません。

「公益通報者保護法」は、労働者が、公益のために通報を行ったことを理由として解雇等の不当な取扱いを受けることのないよう、どこへどのような内容の通報を行えば保護されるのかという制度的なルールを明確にするものです。

通報の主体は、労働者であり、正社員、派遣社員、アルバイト、パートタイマーなどのほか公務員も含まれます。

通報する内容は、一定の法令違反行為です。刑法等をはじめとする特定の法律(令和3年2月1日現在で474法律が対象)に違反する犯罪行為又は最終的に刑罰につながる行為が通報対象事実となります。

通報先は、事業者内部(労務提供先があらかじめ定めた者を含む)、行政機関、その他の事業者外部(例:報道機関、消費者団体、労働組合等)の3つです。

公益通報者の保護の内容としては、次のものがありまます。

①解雇の無効(公益通報をしたことを理由とする解雇は無効)、②解雇以外の不利益な取扱いの禁止(公益通報をしたことを理由とする降格や減給をはじめとする不利益な取扱いを禁止)、③労働者派遣契約の解除の無効(派遣労働者が公益通報をしたことを理由として派遣先が行った労働者派遣契約の解除は無効、派遣先が派遣元に派遣労働者の交代を求めること等、公益通報者に対して不利益な取扱いをすることも禁止)、④公務員に対する取り扱い(公務員についても、公益通報を理由とする不利益な取扱いは禁止)。

通報を受けた事業者や行政機関の対応は次のとおりです。

事業者内部に通報があった場合、書面により公益通報を受けた事業者は、当該公益通報に係る通報対象事実に対する是正措置について公益通報者に通知するよう努めなければなりません。事業者が通報対応等を適切に行うための指針として、消費者庁がガイドラインを公表していますのでご参照ください。

行政機関に通報があった場合、公益通報を受けた行政機関は、必要な調査を行い、適切な措置をとらなければなりません。

また、昨年の改正により(公布から2年を超えない範囲内で施行予定です)、通報者の対象に退職者(退職後1年以内)や役員(原則として調査是正の取組を前置)が追加され、保護される通報に刑事罰の対象だけでなく行政罰の対象も含まれ、保護内容に通報に伴う損害賠償責任の免除が追加されました。 事業者は公益通報者に対して誠実に適切に対応することが求められています。いまいちど、正しい知識のもと理解を深めていただければ幸いです。

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