ハラスメントと会社の安全配慮義務
社内に独身男女がいる場合、恋愛かハラスメントか判断し難いことがあります。
一方が嫌がれば、それ以上つきまとうのはハラスメントです。
会社としても事実調査や、適切な措置を取る必要があります。
役員3名、従業員12名の会社で、1階が倉庫、2階が事務所というどこにでもあるような会社がありました。営業補助担当の従業員を、倉庫業務担当の従業員が好きになり、食事に誘いました。同じ職場でもあり食事にはいったものの、その後の交際申し込みは無視されたようです。
諦めない倉庫業務担当は、その後もたわいもないメールなどを送り続けたり、会社の最寄り駅で旅行の土産を渡したりということを続けていましたが、とうとう営業補助担当が役員に相談したことでことが発覚しました。
役員からはしっかり拒否するよう言われたものの、言い出しにくくてそのままになっていると、更にメールが来るようになりました。
そこで、初めて倉庫担当から事情聴取が行われ、メールなど送って不快にさせないよう注意がなされ、謝罪も行われたことで一段落したかに思われました。
ところが、収まりのつかなかった営業補助担当は、配置転換や、業務内容の変更、懲戒処分、さらには倉庫担当の退職などを会社に要求するようになったのです。
そうは言っても、1階と2階しかない会社で、配置転換も何もありません。なるべく、倉庫と事務の連絡が減るよう業務の工夫はされましたが、それ以上のことはできません。
結局、営業補助担当は、会社を休むようになり、退職しました。
小さな会社では起こり得る男女のトラブルと思われるでしょうが、最近の裁判の事例です。退職した営業補助担当は、会社が調査を怠った、職場環境に対する配慮が足りなかった等々主張して、会社を訴えたのです。
判決では、会社の対応に問題がなかったことが認定されたものの、裁判にかかった費用や労力、また、会社の責任が認められるかどうかは微妙なところだったと考えると、会社側にとっては、大変な負担であったと思います。
中小企業では従業員の確保は頭を痛めているところであるのに、さらに職場の人間関係により双方退職ということになったりすると、労務管理という観点からも問題があります。
ハラスメントについては厚生労働省が指針を出したりしていますが、実際には、人と人との関係は教科書通りにいかないことも多くあります。
日頃から人間関係に目を配り、気を配ってトラブルの芽を摘んでおく必要がありますね。