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キャバクラ店従業員に対する私的交際絶対禁止の同意書は有効!?

キャバクラ店を経営する会社が従業員の女性より私的交際の絶対禁止と違反した場合の違約金200万円の支払いを約する同意書を徴求しました、従業員女性は、同意書に反して私的交際をした結果、どうなったでしょうか・・・・

キャバクラ店を経営するX社は、従業員Y女を雇用するにあたり、私的交際の絶対禁止とそれに違反した場合の違約金200万円の支払を内容とする同意書への署名を求め、Y女も署名しました。なお、X社は、キャバクラ従業員女性の業務内容の中心が男女間の接待であり、従業員が私的交際を行うと担当する客が離れてしまい損害が発生する等の理由より全従業員に対して同意書への署名を求めていました。

その後、Y女は、同意書に反して、副店長の男性と交際をしました。その後の経過はありますが、最終的にX社は、Y女に対し、雇用契約の債務不履行(同意書等の違反)に基づき損害賠償請求をしました。

大阪地方裁判所令和2年10月19日判決は、同意書が、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約をしたりすることを禁じた労働基準法16条に違反し無効であるとしました。さらに、人が交際するかどうか、誰と交際するかはその人の自由に決せられるべき事柄であって、その人の意思が最大限尊重されなければならないところ、本件同意書は、禁止する交際について交際相手以外に限定する文言を置いておらず真摯な交際までも禁止対象に含んでいることや、その私的交際に対して200万円もの高額な違約金を定めている点において、被用者の自由ないし意思に対する介入が著しいといえるから、公序良俗に反し、無効というべきであるとしました。

労働基準法16条は違約金や賠償予定の禁止を定めており、たとえば被用者が遅刻、無断欠席、不注意による不良品の生産等をした場合に一定の金銭を支払う旨の定めなどが該当します。なお、これらの事由について減給処分を行う旨就業規則で定めていることも多いですが、減給処分は労働基準法16条の禁止対象ではなく、労働基準法91条(減給の額の制限)の規制に服すると解されています。  労働基準法16条が問題となる事例としては、いったん支給した留学・研修費用、奨学手当金等について、一定期間の勤務の継続がない場合に返還する旨の合意等があります。このような合意(条項)を検討される場合には、事前にリーガルオピニオンを取得していただくことをおすすめいたします。

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