パワーハラスメント対応のガイドラインを確認しましょう
6月1日より、改正労働施策総合推進法が施行され、事業主のパワハラ防止措置が義務化されました。
具体的な防止措置の内容として、パワーハラスメント防止のための指針(ガイドライン)が定められています。
中小企業については、2022年3月31日までは努力義務とされていますが、ガイドラインを早めに確認しておきましょう。
中小企業にとっては、今は努力義務にとどまるといっても、これは労働施策総合推進法上の話にすぎません。
実際にハラスメント事案が起きてしまったときには、会社の規模にかかわらず、会社が安全配慮義務を尽くしていたかが問われますが、ガイドラインに沿った対応ができていないと、裁判所にもマイナスの評価を受ける可能性が高くなってしまうのです。
ですから、早めにガイドラインの内容を確認し、自社のとるべき対応を検証しておくことが重要です。
さて、ガイドラインでは、まずパワハラの定義や具体例があげられています。
パワハラというと、なんだか面倒くさい、小うるさいと感じてしまう方、ぜひ確認してください。
たとえば、「相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信する」は「パワハラに該当すると考えられる例」。
これに対して、「遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して、一定程度強く注意する」は「パワハラに該当しないと考えられる例」。
場面を想像しながら具体例を読んでいくと、なんとなく境界ゾーンが見えてくるのではないかと思います。
次に、会社が取るべき措置についてです。
⑴ 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
平たく言えば、「パワハラはやってはいけません」「パワハラは厳正に処罰します」ということを、会社が宣言して、労働者に周知しなさい、ということです。
⑵ 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対処するために必要な体制の整備
相談窓口を設置して周知すること、相談担当者が適切に対処できるように教育することなどです。
⑶ 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
まずは事実確認、被害者への配慮措置、行為者への適正な措置、再発防止措置です。
措置の具体的な内容は、ガイドラインに紹介されていますが、パワハラ行為が確認された場合に、行為者にどのような処分を下すかは、非常に難しい問題です。
また事実確認も、双方の言い分が真っ向から食い違う場合などもありますので、初期の段階から弁護士に相談し、助言を受けながら進めるのがよいでしょう。
⑷ そのほかあわせて講ずべき措置
相談者・行為者のプライバシーを保護するための措置を講じ、労働者に周知すること、相談等を理由に不利益な取扱を受けないことを労働者に周知することです。
パワハラが起こらないようにするためには、ただパワハラを禁止するだけではなく、起きてしまったときの相談窓口を整備して、きちんと機能させること、具体的な相談があったら、適切に対処することが必要というわけです。
ガイドラインでは、さらに、「望ましい」取組についても言及していますので、一度確認してみてください。