相続法が改正されました-2
前号では、自筆証書遺言の要件についてお伝えしました。
今回の相続法改正では、この遺言書作成についても改正が行われています。
あわせて、法務局における遺言書の保管に関する法律についてもお知らせします。
1 自筆証書遺言の方式緩和
前号で、自筆証書遺言は、遺言者が「全文」を自書しなければならない、とお伝えしました。
若い健康な方ならどうということもありませんが、そういう方が遺言書を作成するということは、そう多くはないと思います。(もちろん、万一に備えて遺言書を作成することは、誰にとっても大切なことではありますが)
高齢者の場合、遺言能力には何ら問題がなくても、手にうまく力が入らない、震えて書けない、途中で疲れてしまう、などの理由で、自筆証書遺言をあきらめる、あるいは、「全ての遺産を誰々に」といった単純な内容で済ませてしまう、ということがままあります。
今回の改正で、財産目録については、自書は不要となりました。
代わりにパソコンで目録を作成したり、通帳のコピーや不動産登記簿謄本等を目録として添付することができます。
ただし、これらの目録には、署名押印をしなければなりません。
2 自筆証書遺言の保管
自筆証書遺言は、これを公的に保管する制度がありませんでした。このため、せっかく作成したものが発見されなかったり、改ざんや紛失などで相続人にトラブルが発生することがありました。
今回成立した法務局における遺言書の保管に関する法律では、自筆証書遺言を遺言書保管所で保管する制度が新たに創られました。遺言書保管所は、一部の法務局です。
遺言者の申請により、遺言書の原本が遺言書保管所に保管され、画像データも保管されます。
遺言者の死後、相続人などが遺言書の原本を閲覧したり、遺言書の画像データをもとにした証明書を入手することができるようになります。
この保管制度を利用するもう一つのメリットは、裁判所の検認手続きをとる必要がないということです。
法務局における遺言書の保管に関する法律の施行日はまだ決まっていませんが、公布の日(平成30年7月13日)から2年以内とされています。
3 遺言執行者の権限の明確化
現行の民法には、遺言執行者の権限について明確な定めが置かれていません。
これを補完するために、公正証書遺言で遺言執行者を指定する際には、公証人から、遺言執行者の権限についても遺言書で定めておきましょうと提案されることが多いと思います。
今回の相続法改正では、たとえば、遺言執行者は、特定の財産を特定の相続人に承継させる旨の遺言がある場合に、預貯金の払い戻し、解約の請求をすることができるなどと定められています。