遺言書作成日のバックデートは有効?
公正証書遺言を作成するのは手間だけど、相続が心配だから、とりあえず自筆証書遺言を作成しておかれる方も多いかと思います。
しかし、記載の誤りでせっかくの遺言が無効になることもあります。
相続法改正と共に遺言書作成の要件を知っておくことが紛争予防のポイントです。
自筆証書遺言の要件として、民法968条1項は「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と規定しています。
今日は、この中の「日付」の要件について説明します。
普通は、遺言書を作成した日を記載するでしょう。
しかし、既に認知症になってしまっている親に、子供の一人が自筆証書遺言を作成させるような場合、作成日の真実の日付を記載すると、後で遺言能力がない時点で作成された遺言として無効になってしまう可能性があることから、認知症になる前の日付にわざとバックデートさせて遺言書を作成させるようなことがありえます。
このような遺言書の効力はどうなるでしょうか。
意図的に真実と異なる日付が記載された遺言書の効力について、東京地裁平成28年3月30判決は「無効」と判断しました。
他の裁判例によると、錯誤により日付を誤った場合には遺言は有効とされていますので、単なるミスを過度に恐れる必要はありませんが、遺言書に記載されている日付と真実の遺言作成日とが一致していない場合には「単なるミスなのか」、「故意に異なる日付を記載させたのか」が問題となることがありえますので、自筆証書遺言の作成については十分注意が必要です。
公正証書遺言については公証人が作成に関与してくれるため遺言の効力に問題が生じることはほとんどありえません。
やはり手間とお金はかかりますが、公正証書遺言を作成しておくのが安心ですね。