相続法が改正されました
相続法改正について議論がなされてきたことは、過去の号でもお伝えしていました。
7月6日、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が成立しました。相続法は、約40年ぶりの大改正となります。
また同時に、法務局における遺言書の保管に関する法律が成立しました。
今回はこの中から、配偶者の居住権についてご説明します。
居住権には「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」の2種類があります。
1 配偶者短期居住権
配偶者は、相続開始時に被相続人の建物(以下、「居住建物」といいます)に無償で住んでいた場合には、以下の期間、居住建物を無償で使用する権利を取得します。この権利を「配偶者短期居住権」といいます。
① 配偶者が居住建物の遺産分割に関与するとき
遺産分割により居住建物の帰属が確定する日までの間。ただし、相続開始から最低6か月間は保障されます。
② 居住建物が第三者に遺贈されたとき、配偶者が相続放棄をしたときなど①以外のとき
居住建物の所有者から消滅請求を受けてから6か月
2 配偶者居住権
「配偶者居住権」とは、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物を対象として、配偶者にその使用または収益を認めることを内容とする権利です。期間を一定とすることも、終身とすることもできます。
建物の所有権とは別に、「配偶者居住権」という権利ができますので、遺産分割における選択肢が増えることになります。
このとき、「配偶者居住権の価値」をどのように考えるかが、問題となりそうです。
この点については、事務当局から、「建物敷地の現在価値」から「負担付所有権の価値」を差し引いて算出するとの考え方が示されており、「負担付所有権の価値」は、配偶者居住権の負担が消滅した時点の建物敷地の価値を算定した上で、これを現在価値に引き直して求めるとされています。