裁判手続の基本的な流れ~ドラマとの違い~
売掛金や貸付金の回収が滞り,話し合いをしても一向に支払ってもらえない。そんなときに,最終手段となるのが訴訟です。
テレビドラマ等で,裁判官を前に,弁護士等が派手に議論を交わす場面を見ることも多いかと思いますが,実は結構地味な手続きです。
そこで、民事訴訟の基本的な流れをまとめてみました。
1 訴えの提起
民事訴訟は、まず訴状を裁判所に提出することから始まります。
訴額(支払いを求めるお金の額)が140万円を超える場合には地方裁判所に、140万円以下の場合には簡易裁判所に訴状を提出します。
また、訴額が60万円以下の場合には少額訴訟手続という、1日のうちに判決が下される手続きを利用することができます。
注意すべきは,金銭支払いについての訴訟を提起する場合、原則として被告の住所地を管轄する裁判所に訴えを提起しなければならないというところです(実際は色々と例外がありますが)。
2 答弁書の提出・口頭弁論
提出した訴状に不備がなければ、裁判所により訴状が被告に送達され、訴訟が開始します。
訴訟が始まってからしばらくは、原告被告間で、お互いの主張を記載した書面や証拠を提出しあい、それを基に裁判官が争点を整理します。
長い事件では1年以上も、書面のやり取りが続くこともあります。
「提出された書面は陳述」という一言のみで、次回期日を決めるだけの期日も多くあり、傍聴した依頼者から「え、これで終わりですか!」と言われることもあります。
3 尋問・和解
争点が絞られてきた段階で、裁判所から、その時点での心証を前提とした和解案の提示がされることがあり、和解が成立することもあります。
和解が成立しない、または、そもそも和解が難しい事案では、尋問手続きになります。
この尋問手続きというのが、よくドラマでみられる、裁判官を前に、当事者が弁護士から質問を受けるという手続きです。
双方の弁護士、裁判官からの質問の中で、事実関係が明らかになることも多く、弁護士としては緊張する場面の一つです。
ただ、ドラマと違って、証人などが好き勝手に話をすることや、傍聴席に座る人とやり取りをするようなことは認められておらず、基本的には弁護士等から聞かれた質問に答えることだけが求められます。
尋問後、裁判所から再度、和解を勧められることもあります。
この時点では、裁判官は、どちらが勝つかという心証を形成していることが多く、最終的な判決を見越した提案がなされます。
4 判決
尋問後、和解が成立しなかった場合は、裁判所によって判決が下されます。
判決文は両当事者に送達されますが、判決に不服がある場合には、送達を受けた日から2週間以内に控訴する必要があるため注意が必要です。