死亡保険金と破産について
甲野花子は、被保険者を自身、受取人を甲野太郎とする生命保険契約を締結していました。
ところが、甲野太郎は事業に失敗して、破産…。
破産手続きが開始した後に、花子が死亡して、太郎は死亡保険金を受領できることになりました。
さて、太郎はこの死亡保険金を自由に使えるのでしょうか?
最判平成28年4月28日(金融法務事情2052号67頁)は、上記の論点について、破産者が有する死亡保険金請求権は、破産法34条2項にいう
「破産者が破産手続開始決定前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」
に該当するものとして、破産財団に属すると判断しました。
つまり、上記の場合、太郎は花子の死亡保険金を受領できず、死亡保険金は、破産管財人を通じて、債権者の配当にまわされることになります。
感覚的には当たり前のように感じるかと思いますが、この件は、破産者側の弁護士が、破産者に受け取った死亡保険金を消費してよいと助言したとして、当該弁護士の注意義務違反も問われました(一審、二審ともに責任は否定されています)。
仮に、裁判で自身の注意義務違反が否定されたとしても、自分のアドバイスが原因で依頼者が損害賠償請求等を受けることになり、さらに、自身も裁判の被告とされれば、大変なことですので間違いのないよう、日々、勉強を怠ってはいけないな、とこの件を通じて改めて思います。