相続で揉めるパターン3 お墓はどうする
お墓や仏壇は、遺産にはなりません。
法定相続で分割することになじまないからです。
祭祀承継人の定めによることになります。
これまで何度か、遺産にまつわる問題点をお話してきました。ところで、誰かが亡くなられた場合、家のお墓や仏教なら仏壇、あるいは位牌など宗教的な対象物が問題になることが残ってきますね。
弊所の某創業者のように地方の出身で実家周辺に適切な後継ぎが次代にはいなくなることが予想されている場合、お墓や仏壇は将来的にどうしようかという問題があります。完全に負の遺産のようになっていますね。車で何時間もかけて帰省し、墓掃除をすることは、地方で生まれ育った世代ならともかく、都会で生まれ育った孫の代には望めない話になりますね。
引き受け手がいない場合には、相続人の誰かあるいは全員で費用負担をして墓じまいをすることになりますが、実際には費用負担で揉めて棚ざらし、雨ざらしになっているお墓や、家の中にポツンと座っている仏壇が全国的に多くあります。歳とともに先祖からの繋がりの大切さを感じるだけに残念なことです。
さて、お墓や仏壇を引き取って供養したいという子どもたちが複数いる場合は、どのようになるでしょう。今日の題にもなっているように、お墓などは、遺産には含まれません。金の仏壇に相続税がかかるかという議論があるのをご存じの方も多いでしょうが、仏壇やお墓などは、法定相続での分割の対象になる遺産ではないのです。
これらは、民法897条に定める祭祀承継の対象となります。
第1に被相続人、すなわち現在祭祀承継人である人が遺言で指定をすることができます。この場合は、もめごとになる余地がありません。
第2に指定がない場合、慣習によることになります。ただ、実際は慣習といっても明確なものではなく、例えば長男が自動的に祭祀承継人になるという慣習までは認められません(昭和の頃はそうだった気もしますが、、、)。
第3に家庭裁判所で決めることもできます。この場合、裁判所は、被相続人との関係(形式も実質もみます)、現実の管理能力、関係者の意見などを総合的に判断して決定することになります。最近では、都会でお墓を新しく建てるのには100万円単位でおかねがかかってしまうこともあり、弁護士費用をかけても争う価値があるかもってことで、祭祀承継人は自分だ!と名乗りを上げる相続人が複数現れるケースも増えています。 このように、遺産の分割とは理屈では別なのですが、同じ機会に話し合われることも多いため、お墓や仏壇には気を付けて処理する必要がありますね。