最高裁の国民審査って
先日行われた衆議院総選挙ですが,その際にひっそり(?)と行われた国民審査。みなさんは,何を考え,どのように投票されたでしょうか。
憲法第79条2項は,
最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
と定めています。また同条2項では,
前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
とされています。実際に投票所にいくと,最高裁判所の裁判官の名前が並んだ投票用紙が渡され,やめさせたいと思う裁判官の名前の上にバツをつける形式になっています。
この国民審査は,日本国憲法制定の際に定められたもので,先日が第25回目の国民審査となりました。
罷免されるのは,バツが過半数を超えた場合という条件ですから,当然これまでに罷免された裁判官はいません。そもそも,最高裁の裁判官が誰かということを日常から意識している人はごく限られた人でしょうし,ましてや,その裁判官がどんな人で,どんな判決を下しているのかということを知っている人はほとんどいないのではないでしょうか。
それで,何も記入せずに投票箱に入れるか,あるいはよくわからないけどなんとなく白票はもったいない気がして,右の方に名前がある人に適当にバツをつけるという人が大半でしょう(ネタのような話ですが,過去の統計では,右の方に名前があるとバツの率が高い傾向にあるそうで,並び順はくじびきで決めることになっています)。国民審査の意味がないといわれるゆえんです。
しかし,今回の国民審査では,選択的夫婦別姓制度訴訟で,現在の制度を合憲と判断した4人の裁判官に,バツがついた率が高かったなどと報道されています。罷免された裁判官はいないとはいえ,国民の声を示す大切な一手段であることは間違いありません。
さて,冒頭に引用した憲法の条文のとおり,国民審査は任命後最初の総選挙の際に行われます。2回目はその後10年を経過した後の総選挙の際に行われますが,最高裁の裁判官には70歳という定年があるので,実際に2回目の審査を受ける裁判官はほとんどいません。国民の声を示すという意味においては,衆議院総選挙のたびに全裁判官を審査する方がよいという意見もありますが,みなさんはどう思われるでしょうか。現行の制度のままだとしても,もう少し判断の材料になるような報道が活発になってほしいと思います。