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デジタル給与払い、解禁

 4月1日から、賃金のデジタル支払いが解禁されます。デジタル支払いとは,厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者のアカウントに給与を振り込むことです。つまり,預金口座ではなく,「○○ペイ」などのアカウントに直接送金することになります。

現代社会においては,給与は銀行の預金口座に振り込まれ,明細は社内システムなどから自分でダウンロードするというのが大半ではないでしょうか。
しかし法律上は,「賃金は,通貨で,直接労働者に,その全額を支払わなければならない」と定められています(労働基準法第24条1項本文)。つまり,原則は,1人1人現金で手渡し。預金口座への送金で支払うことは,法令上認められた例外なのです。

 ちなみに当事務所では,10年ほど前まで法の原則にのっとり,代表の明石から手渡しされていました。はじめて給与をもらったときはなんだか感動したものですが,その後メンバーが増えたこともあり,お互いの利便性を考慮して,銀行振込に変更となりました。

 さて,4月1日からは,この例外が1つ加わり,デジタル支払いができるようになります。全国の財務局に登録されている資金移動業者は,3月15日現在84社ですが,この資金移動業者のうち,厚生労働大臣の指定を受けた業者についてデジタル支払いの利用が可能となります。資金移動業者が厚生労働大臣の指定を受けるための申請は4月1日から受け付けられ,その後数ヶ月にわたって審査が行われるということですから,実際にデジタル支払いが開始されるのはもう少し先になりそうです。

 また,企業がデジタル支払いを行おうとする場合は,労使協定を締結した上で,デジタル払いを希望する各労働者から同意書を取得する必要があります。この同意書を取得する際には,留意事項(具体的な内容は,厚労省が公開している同意書の裏面に記載があります)を説明することとされています。
「○○ペイ」などのキャッシュレス決済が相当普及してきたとはいえ,給与をデジタルで直接受け取りたいという人はどれくらいいるのでしょうか。現時点では想像がつきませんが,各資金移動業者が競って給与受取口座の指定でポイント何倍!などとキャンペーンを展開すると,一気に広がるのかもしれません。企業側にとっては手間が増えてしまうことになりますが(資金移動業者の口座残高は100万円が上限となり,このような口座は預金を目的とするものではない以上,給与の一部のみをデジタルで受け取り,残りは預金口座に送金する,ということになるでしょう),労働者にとってデジタル支払いが魅力的に映るようになってくると,導入を検討せざるを得ないことになりそうです。

以上

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