相続した「負動産」を国に引き取ってもらおう
4月27日から、「相続土地国庫帰属制度」がスタートします。
メールマガジン131号で「相続登記の義務化」,136号で「管理不全土地・建物管理制度」についてご紹介しましたが,近年,「所有者不明土地」の問題が深刻化しており,続々と新しいメニューが増えています。
今回ご紹介するのは,4月27日からスタートする「相続土地国家帰属制度」です。
相続した土地を,自分では利用する予定がないし,売ろうにも売れない,管理する手間やコストの負担が大きくて・・・というのはよく聞く話です。このようないわゆる「負動産」を,一定の負担金を支払って国に引き取ってもらうという制度が,相続土地国庫帰属制度です。
とはいえ,国に誰も欲しがらないような土地を引き取ってもらうわけですから,どんな土地でもOKというわけではありません。
まず,申請ができない土地としては,次のようなものがあります(却下要件)。
① 建物がある土地
② 担保権や使用収益権が設定されている土地
③ 他人の利用が予定されている土地(道路,墓地,水道用地など)
④ 特定有害物質により土壌汚染されている土地
⑤ 境界が明らかでない土地・所有権の存否や帰属,範囲について争いがある土地
次に,申請が受け付けられても,審査で該当ありと判断された場合に承認されない土地としては,次のようなものがあります(不承認要件)。
① 一定の勾配・高さの崖(勾配30度以上+高さ5メートル以上)があって,
かつ,管理に過分な費用・労力がかかる土地
② 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
③ 土地の管理・処分のために,除去しなければならない有体物が地下にある土地
④ 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
⑤ その他,通常の管理・処分にあたって過分な費用・労力がかかる土地
・災害の危険により,土地周辺の人や財産に被害を生じさせるおそれを防止するため
措置が必要な土地
・土地に生息する動物により,土地や土地周辺の人,農産物,樹木に被害を
生じさせる土地
・適切な造林・間伐・保育が実施されておらず,国による整備が必要な森林
・国庫に帰属した後,国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき
負担する土地
・国庫に帰属したことに伴い,法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を
国が承継する土地
いかがでしょうか。
「負動産」の典型例としては,誰も住まない,解体に費用がかかる住居や,手入れができていない山林などがあげられますが,前者は却下要件の①にあたるので建物の解体が必要ですし,後者は却下要件の④にあたる例も多く,あたらないとしても不承認要件の①や⑤に該当してしまうケースがあるでしょう。
というわけで,利用にはなかなかハードルが高いといえそうですが,ひとつの選択肢として頭の片隅においておかれるとよいと思います。
以上