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フリーランス保護法が成立しました

 新しい法律の紹介です。「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」が成立し,5月12日に公布されました。「フリーランス保護法」,「フリーランス保護新法」などと報道されています。
 施行は,公布の日から1年6か月を超えない日とされており,まだ,施行令やガイドラインなどは定まっていませんが,概要をご紹介したいと思います。  

 従業員を雇い入れると,労働基準法等の労働関連法令が適用されたり,社会保険の加入義務が生じたりして,事業主にとって負担が重くなるため,これを回避するニーズがあること,働き手としても,縛られない自由な働き方ができる,ワークライフバランスを実現しやすいなどといった理由から,フリーランスに対する業務委託を活用するケースが年々増えています。

 とはいえ,フリーランスは弱い立場にありますので,契約の内容が曖昧なままに業務を進めざるを得なかったり,委託側から一方的に不利な条件を押しつけられたりするなどの問題も生じていました。

 これに対して法的規制が全くなかったかといえばそうではなく,一部に対しては下請法の適用があったり,独禁法の規制も存在します。また,フリーランスや業務委託の名称を用いていても,実質は雇用契約であるとして,労働関連法令が適用されるケースもあります。これらをまとめて整理したものが,令和3年に発表された「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」でした。もっとも,独禁法違反かどうか,労働関連法令が適用されるかどうかはは線引きが難しく,下請法の適用範囲は限られていますので,今回,フリーランス保護法が成立したという流れです。

 まず,保護の対象となる「フリーランス」とは何か,というお話から。
 フリーランス保護法では,業務委託の相手方である事業者であって,①個人であって,従業員を使用しないもの,または②法人であって,1人の代表者以外に他の役員がなく,かつ従業員を使用しないものを「特定受託事業者」と定め,保護の対象としています。

 この特定受託事業者に対し業務委託をした場合は,契約の内容を書面または電磁的方法で明示する必要があります。この明示義務は,個人事業主や代表者1人のみの法人が委託者となる場合にも課されます。

 また,業務委託をする事業者で,①個人であって,従業員を使用するもの,または,②法人であって,2人以上の役員があり,または従業員を使用するものは,「特定業務委託事業者」となり,特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をする場合には次のような規制があります。
  

  • 報酬の支払期日を給付の受領日(注:検査完了日ではない)から60日以内に定めなければならない
  • 特定受託事業者の責に帰すべき事由がないのに,給付の受領を拒んだり,報酬を減額したり,給付物を引き取らせたりしてはならない
  • 不当に低額な報酬を定めてはならない
  • 正当な理由がある場合を除き,指定する物の強制購入,役務の強制利用をさせてはならない
  • 一定期間以上にわたる業務委託を行う場合は,妊娠,出産,育児,介護等との両立について必要な配慮をしなければならない
  • ハラスメント対応に必要な体制の整備等の措置を講じなければならない
  • 一定期間以上にわたる業務委託の解除しようとする場合は,30日前までに予告をしなければならない

 これから,施行令やガイドラインによって具体的な内容が定まってきますので,注視する必要がありそうです。

以上

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