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キャンセル料の定め方

 旅行や飲食店,結婚式場の予約,定期購入やエステなど,世の中にはさまざまなキャンセル料(解約料)が存在します。消費者庁が行ったキャンセル料についての意識調査では,過去1年にキャンセルをしたことのある人の約6割がキャンセル料の支払いに対して不満と回答したそうです。

 他方で,消費者に商品やサービスを提供する事業者側には,消費者からキャンセルを受けた場合,損害が生じることになりますから,キャンセル料を定めてその損害をてん補したり,あるいはそもそも解約(ひいては安易な契約)を抑制したいというニーズが存在します。

 このキャンセル料が法外な金額になっていると,消費者に多大な損害が生じますので,消費者契約法は,当該事業者に生ずべき「平均的な損害の額」を超える部分を無効と定めています。

 では,「平均的な損害の額」はどのように考えたらよいのでしょうか。この点は法律では明らかになっていません。
また裁判例でも解釈が統一されているというわけではなく,いくつかの考え方が存在します。
たとえば, 
・「キャンセルされなかった場合の粗利率」―「キャンセルによって支出を免れた費用」とする考え方
・新たに他の顧客を募集するためにかかる費用とする考え方
・解約までに事務処理のために要した労力や費用などを考慮する考え方
など,いろいろな裁判例が存在します。

 また,消費者側でこの「平均的な損害の額」を算定することは難しいという問題もあり,事業者がキャンセル料の算定根拠について説明すべき努力義務が定められています。

 したがって,事業者がキャンセル料を定めるにあたっては,「平均的な損害の額」という観点から説明ができるかどうかという点をクリアにしておく必要があります。なお,エステや語学教室等,特定商取引法により解約料の上限が定められている業種もありますのでご留意ください。

 ところで,事業者が価格を決めるにあたって,キャンセル料(解約料)もその決定要素の一つとなっているケースもあります。一番イメージしやすいのは航空券で,同じ便の同じクラスの座席であっても,いくつかの料金プランがあり,キャンセル規定が異なっているというのがありますね。このような考え方は,インターネットやサブスクの普及でますます広がっていますが,この場合のキャンセル料は,「平均的な損害の額」だけで説明できるかというと,なかなか難しいところです。   

 このような背景もあり,消費者庁がキャンセル料に関する研究会を開催しているようです。
結果,何らかのルール見直しにつながるのか,要注目です。


以上

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